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オンセミCEOのHassane El-Khoury氏
オンセミCEOのHassane El-Khoury氏
(写真:オンセミ)

 産業機器や自動車分野で採用が広がるにつれて、次世代パワー半導体のSiC(炭化ケイ素、シリコンカーバイド)メーカーの争いが激化している。中でも攻勢をかけているのが、米onsemi(オンセミ)だ。同社CEO(最高経営責任者)のHassane El-Khoury(ハッサーン・エルコーリー)氏が報道機関向け説明会に登壇。競争を勝ち抜く条件として、垂直統合化や大規模投資を挙げた。

 オンセミは2016年に米Fairchild Semiconductor(フェアチャイルドセミコンダクター)の買収を完了したのを契機に、パワー半導体事業を強化。2020年にエルコーリー氏がCEOに就任した頃から、特にSiC事業に注力し、垂直統合化や大規模投資を加速させた。

 例えば、2021年にSiC結晶技術を有する米GT Advanced Technologies(GTアドバンスト・テクノロジーズ)を買収。これにより、SiC結晶から同結晶を切り出して作る基板(ウエハー)、ウエハー上に作製するパワー素子、同素子をパッケージに収めたパワーモジュールまで、自社で手掛ける体制を強化した。再生可能エネルギーや電気自動車(EV)の普及などから、SiCの需要が拡大。今後もその傾向が続くことから、SiC基板不足が懸念されており、大手半導体メーカーはその確保に躍起だ。こうした背景から、オンセミはGT Advanced Technologiesを買収し、内製化を進める決断を下した。現状は外部調達が多いが、「2023年の終わりごろには内製品が大半を占めるようになる」(エルコーリー氏)という。

 2022年8月には、「ブール」と呼ばれるSiC結晶の塊を増産すると発表。米ニューハンプシャー州ハドソンの拠点に新棟を建設した。この新棟により、SiCブールの生産能力は前年比で約5倍になった。これに伴い、基板や素子などの生産能力も強化するという。