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 茨城県笠間市が2022年10月、ディスプレーやタブレット端末などを搭載した車両を市役所窓口とオンラインでつなぐ「動く市役所」の実証実験を実施した。車両が市内の様々な場所に出向くため、利用者は離れた拠点まで足を運ぶ必要が無く、ディスプレーの画面越しに担当者の顔を見て説明を受けながら手続きを進められる。自治体や民間事業者が窓口や店舗といった拠点を集約する動きを広げるなか、オンライン手続きが難しい高齢者などの大きな助けになり得る。

 2022年10月21日の昼下がり、茨城県笠間市のショッピングモール「ポレポレシティ」には「動く市役所」ののぼりを掲げたワゴン車が止まっていた。中には折りたたみ式のテーブルや椅子を設置してあり、24インチモニターやタブレット端末などを備える。この日は動く市役所を笠間市役所とつなぎ、マイナンバーカードの発行申請を遠隔で受け付ける実証実験を実施していた。

商業施設で市役所の窓口サービスが受けられる実証実験を実施した
商業施設で市役所の窓口サービスが受けられる実証実験を実施した
(撮影:日経クロステック)
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 動く市役所は笠間市が「汎用デジタル窓口」を使って取り組む実証実験だ。汎用デジタル窓口は日立製作所が2022年10月17日に販売を始めたサービスで、自治体の地域の出張所や公民館、銀行や駅、移動車両など生活圏の身近な場所に利用ブースを設置して遠隔地からでもオンラインで自治体や民間企業の窓口サービスを受けられる機能を備える。

 車両には利用者側が相手の顔を見たり必要な案内を受けたりするための大型ディスプレー、手元の書面などを投影するための書画カメラ、手書き入力が可能なタブレット端末といった機器を搭載してある。サービス提供者側は基本的にタブレット端末と書画カメラを使い、インターネットを使ったテレビ通話で遠隔地から車両側の利用者をサポートする。笠間市では今回マイナンバーカード申請の実証実験だったため用いていないが、マイナンバーカードを読み取って本人確認ができるカードリーダーを用いた手続きも可能だ。

市役所職員の顔を見ながら遠隔地からマイナンバーカードの発行申請ができる
市役所職員の顔を見ながら遠隔地からマイナンバーカードの発行申請ができる
(撮影:日経クロステック)
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 汎用デジタル窓口が主なターゲットとするのは「窓口で相談しながらやるような難しい手続き」(日立製作所の笹森照代公共システム営業統括本部第四営業本部地域ビジネス推進センタソリューション営業G部長代理)だ。官民問わず様々な手続きのオンライン化が進む一方、難しいと感じる高齢者なども多いため「スマートフォン(によるオンライン)一辺倒ではない新しいサービスの形として提供していく」(日立製作所の高橋正樹公共システム事業部全国公共システム第一本部自治体ソリューション推進部第2グループ課長)考えだ。

 ポレポレシティのマイナンバーカード発行申請の実証実験に参加した70代の男性は、手続きの終了後「買い物ついでに申請できた。顔を見て説明を受けながら進められるので安心感があった」と話した。