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 ダイハツ工業は京都(大山崎)工場を約50年ぶりに刷新し、2022年10月に本格稼働させた。電動化・炭素中立時代に向けた小型車生産の中核拠点となる。設備投資額を約350億円に抑えながら、生産性を約2倍に高めた。工場からの二酸化炭素(CO2)排出量も約40%減らした。今回の工場刷新ではAI(人工知能)などの最先端技術は使わず、同社が得意とする“地道”な改善策を随所に盛り込んだ。

 ダイハツの京都(大山崎)工場は1973年4月に操業を開始。ダイハツブランドの小型車や、トヨタ自動車へのOEM(相手先ブランドによる生産)供給車を中心に、累計で約640万台の車両を生産してきた。刷新後の新工場では、小型車「ブーン(ダイハツ)/パッソ(トヨタ)」、小型ミニバン「トール(ダイハツ)/ルーミー(トヨタ)/ジャスティ(SUBARU)」、商用バン「プロボックス(トヨタ)」の6車種を生産する(図1)。

京都(大山崎)工場
図1 約50年ぶりに刷新した京都(大山崎)工場
2022年10月に本格稼働した。手前の白い建屋が新設した車両の組み立て工場と塗装工場である。(写真:ダイハツ工業)
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良品廉価な商品を支えるのは生産現場

 新工場の年産能力は23万台であり、刷新前より9万6000台増えた。生産タクトタイムは刷新前の1.55分(93秒)から0.9分(54秒)に短くなり、生産性は約2倍に向上した()。「1mm、1g、1円、1秒にこだわり、良品廉価な商品をタイムリーに顧客に届けるためのベースとなるのは生産現場だ。生産現場の競争力を高めるために、京都(大山崎)工場を刷新した」――。ダイハツ社長の奥平総一郎氏は、2022年10月に開いた新工場の竣工式で、刷新の狙いをこのように述べた。

京都(大山崎)工場の概要
表 刷新後の京都(大山崎)工場の概要
今回の刷新によって、小型車生産の中核拠点となる。電動車両にも対応する。(出所:ダイハツ工業の資料を基に日経Automotiveが作成)
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 「人にやさしい」工場の実現も課題になっていた。「人手不足と従業員の高齢化が進んでいる状況で、工場の生産性を上げていくためには、高齢者でも働ける工程づくりや機械化を進めることが必要だった」と奥平氏は力を込める。

 今後の電動化に対応する必要もある。ダイハツは2030年に販売する全てのクルマを電動車両にする計画を打ち出している。ここでいう電動車両とは、電気自動車(EV)やパラレル方式のハイブリッド車(HEV)を指す。さらに同社はこれまで、2050年に工場における炭素中立を目指していたが、トヨタグループの目標に合わせて、目標時期を2035年に前倒しした。

 新工場の刷新に関する設備投資額は約350億円である。限られた工場予算の中で、ダイハツはこれらの課題に挑んだ。良品廉価のクルマ造りを支える“ダイハツ流”の工場刷新の取り組みを詳しく見ていく。