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 政府は2022年11月8日、2022年度の第2次補正予算案を閣議決定した。物価高などに対策を講じる総合経済対策に基づくもので、日経クロステックの集計では、デジタル関連政策に投じる額は2600億円を超える。

 電気料金などの物価高対策に重点があるため、補正予算(一般会計)の総額28兆9222億円から見ればデジタル分野への投資は大きくはない。目玉政策の1つである「人への投資」はデジタル分野のリスキリング(学び直し)などを新たに強化したものの、新規の予算をとらずに2022年度通常予算から未執行分の一部を振り向ける「制度要求」が多い。

 新規の予算獲得で目立ったのは、直接的な施策だけで計661億円(日経クロステックの集計額)を投じるマイナンバー関連だ。政府は紙やプラスチックカードの健康保険証の新規発行を2024年秋に停止する方針を2022年10月に打ち出している。実現へ、すぐに取り組むべき政策をそろえた。

2022年度第2次補正予算案での主なマイナンバー関連政策
(出所:各府省の予算案を基に日経クロステック作成)
省庁要求項目金額(億円)
デジタル庁マイナンバーカード関連(マイナポータル改修・広報など)118
厚生労働省マイナ保険証向けオンライン資格確認の普及344
総務省マイナンバーカード普及の強化・利便性向上策199

マイナ保険証、看護や鍼灸は安価なタブレット端末でシステム対応

 保険証をマイナンバーカードで完全に代替して新規発行を停止するには、カードの普及だけでなく、公的医療保険を利用できるあらゆる診療・看護や施術の現場がマイナ保険証に対応する必要がある。現在は訪問診療や訪問看護、鍼灸(しんきゅう)・マッサージや柔道整復師(柔整)の施術などで、患者のマイナ保険証から被保険者の資格を読み取るオンライン資格確認にまったく対応できていない。

 厚生労働省はオンライン資格確認が導入できる医療機関を拡大するために総額344億円を求めた。内訳は、訪問診療など新たにシステム対応をする機関への導入支援が173億円、国が構築し国民健康保険中央会など支払基金側が用いる「オンライン資格確認等システム」の改修に51億円、市区町村や国など保険者が運営するシステムの改修に56億円などである。

 厚労省は訪問看護や鍼灸・マッサージ・柔整など中小の事業者への導入を想定して、タブレット端末を用いたオンライン資格確認のシステムを普及させる考えを今回の補正予算案で打ち出した。1台の端末でマイナ保険証の読み取りや患者の顔認証、診療情報やレセプトの電子化などに対応できる機能を実装する方向だという。安価な端末を用いて、中小を含めたすべての医療・看護、鍼灸・マッサージ・柔整でマイナ保険証に対応する環境を整える狙いだ。ただし今回確保した173億円では、財務省との折衝により、訪問看護ステーションや職域診療所などへの支援分までは確保できなかった。厚労省は2023年度当初予算で予算を確保し、残る機関すべてへの財政支援を用意する方針だ。

厚生労働省が補正予算で計画するマイナ保険証の環境整備策。新たに対象になる訪問診療や鍼灸院などにタブレット端末の簡易なオンライン資格確認用のシステム導入を支援するほか、国のオンライン資格確認等システムを改修する
厚生労働省が補正予算で計画するマイナ保険証の環境整備策。新たに対象になる訪問診療や鍼灸院などにタブレット端末の簡易なオンライン資格確認用のシステム導入を支援するほか、国のオンライン資格確認等システムを改修する
(出所:厚生労働省)
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 財政支援を想定する端末の仕様などはこれから詰めるが、「導入費用は安価なもので1台5万円程度」(保険局医療介護連携政策課保険データ企画室)を想定している。訪問看護など中小の機関に対しては、補正予算で導入費用のうち4分の3を補助する。また医師が高齢などの理由でマイナ保険証に対応する義務が免除されている診療所も、マイナ保険証に対応する場合はこのタブレット端末で普及を図る考えだ。

 対象となる中小の事業者は鍼灸・マッサージ・柔整が14万1000、訪問診療に関わる診療所と薬局が5万5000件など。病院や診療所は先行して国がシステム導入を支援しており、2023年4月からはマイナ保険証への対応が義務化されている。しかしカードリーダー導入やシステム対応が済んだ医療機関は約4割にとどまっている。現在のところは訪問看護や鍼灸・マッサージ・柔整などの新たな拡大対象にマイナ保険証への対応義務はない。その中で新しいシステムを中小の事業者に拡大することが、既存保険証の廃止の必要条件になる。