全2379文字
PR
Armプロダクトマーケティング担当バイスプレジデントのイアン・スマイス氏(写真:日経クロステック)
Armプロダクトマーケティング担当バイスプレジデントのイアン・スマイス氏(写真:日経クロステック)
[画像のクリックで拡大表示]

 5G(第5世代移動通信システム)やメタバース(仮想空間)に向けた投資が世界で加速するなか、英半導体設計大手Arm(アーム)の存在感が高まっている。低消費電力のプロセッサー設計に強みを持ち、モバイル機器向けで世界トップのシェアを誇る同社だが、近年は自動車やサーバー、IoT(インターネット・オブ・シングズ)向けでも採用が広がっている。

 アームはモバイル機器向けCPU設計に強みを持つ一方で、これまでサーバー向けでの存在感は小さかった。近年はプロセッサーの電力効率の高さが注目され、さまざまな分野で採用が進んでいる。アームでプロダクトマーケティング担当バイスプレジデントを務めるIan Smythe(イアン・スマイス)氏は、「自動車やクラウドなどで低消費電力のニーズが高まり、アームの果たす役割が増えている」と説明する。

スマイス氏の主なコメントは以下の通り。

日本市場におけるアームの戦略を教えてください。

 日本市場では、さまざまな分野でビジネス機会がある。例えば、スマートフォンやスマート家電など、多くの消費者向けの製品にアームのアーキテクチャー(基本設計)が採用されている。今後は、拡大するIoT市場でも大きな可能性があると考えている。他にも、富士通と理化学研究所が開発したスーパーコンピューター「富岳」に採用されたし、自動車関連メーカーとも長年にわたって協力関係を築いてきた。

 自動車の運転支援や自動運転では、車載バッテリーの限られた電力で効率的に稼働するコンピューターを設計する必要がある。そういった点で、ハードウエアを仮想化技術で抽象化する「ソフトウエア・デファインド」による開発がより重要になるだろう。実際、アームは米国サンフランシスコで、自動運転タクシーの実証に取り組んでいる。

低消費電力のニーズはますます高まっています。

 アームは創業以来30年以上にわたり、低消費電力のプロセッサーを設計してきた。低消費電力は、アームのエンジニアリング文化に組み込まれている。CPUやGPUのアーキテクチャーを考えるときは必ずエネルギー効率を重視する。

 サーバー向けのプロセッサーでも、アームは優れた低消費電力性を実現している。米Amazon Web Services(アマゾン・ウェブ・サービス、AWS)のような大手クラウドサービス事業者に提供して、データセンターの消費電力を削減している。クラウドサービス事業者にとって電力コストは非常に大きな課題であり、アームが大きく貢献できる分野だ。

ハードウエアでは半導体の微細化が進んでいます。アームはどのように貢献しますか。

 IP(回路情報)の会社としてプロセッサーを設計するときに検討しないといけないのは「チップ内のどこにCPUを実装するか」「プロセッサーのプロセスノード(世代)において、どれだけの面積で性能を実現しないといけないか」といった点だ。一般に、面積とトランジスタ数が増えてクロック数も増加した場合、それだけ多くの電力を消費するようになる。

 アームは、限られた面積の中でいかに高い性能および低消費電力性を実現するか、という視点でアーキテクチャーを考えている。半導体業界は常にコストプレッシャーを受けており、最先端プロセスでさえコスト低減や歩留まり向上が求められている。そのため、半導体メーカーや自動車メーカーとは長期的な視点で関係を築いて議論している。