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 量子ドット(Quantum Dot、QD)は、高輝度で高い色純度の光を発光させられる粒子である。実体は、硫化カドミウム(CdS)やセレン化カドミウム(CdSe)に代表される直径数nmの半導体微粒子である。最近は、粒子の中心部と外層で元素の組成が変わるコアシェル型と呼ばれるタイプも増えている。その色は量子ドットの寸法を変えることでさまざまに変えられる。これは、量子ドットの「バンドギャップ」と呼ばれる半導体の性質が、その粒子の寸法によって変わることに起因する。

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次世代ディスプレーの本命か

 以前は医療用の標識が主な用途だったが、最近は液晶ディスプレーの発色を改善するために使われ始めた。

液晶ディスプレーの発色改善に利用
(写真:日経クロステック)
(a)SID Display Weekに韓国Samsung Electronicsが出展した65型4Kの量子ドット利用液晶ディスプレー(右)とWOLED方式の4K有機ELディスプレー(左)との発色の比較
(a)SID Display Weekに韓国Samsung Electronicsが出展した65型4Kの量子ドット利用液晶ディスプレー(右)とWOLED方式の4K有機ELディスプレー(左)との発色の比較
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(b)液晶ディスプレーのバックライトに、量子ドットを含むシートを被せて発色を改善。このシートは米Nanosys製
(b)液晶ディスプレーのバックライトに、量子ドットを含むシートを被せて発色を改善。このシートは米Nanosys製
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 ただし、液晶ディスプレーはバックライトを液晶で透過させたりさせなかったりするディスプレーで、コントラスト比と呼ばれる「黒」の表現力に課題を抱えている。このため、画素が自発光することでコントラスト比が高い有機ELディスプレーが台頭したが、これにも課題がある。発光するのが有機材料で、「焼き付き」と呼ばれる現象が起こりやすいため、輝度を十分には高くできないなどの点だ。

 最近の研究開発の場では、有機材料の代わりに、色純度が高く焼き付きの可能性が低い量子ドット自体を発光させてディスプレーにする「QD-EL」ディスプレーが目立ち始めた。中国TCL科技集団、中国BOE Technology Group(京東方科技集団)、韓国Samsung Display(サムスンディスプレイ)など世界のディスプレーメーカー大手が、QD-ELを次世代の中型以上のディスプレー技術として本命視する。