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 NASA(米航空宇宙局)が2022年11月16日に打ち上げた月探査計画「Artemis」の大型ロケットは、日本からは宇宙航空研究開発機構(JAXA)や東京大学が手掛ける小型衛星も月に運ぶ。米Amazon.com(アマゾン・ドット・コム)の「Alexa」も搭載。宇宙開発の発展を目指し、これら国際協調や民間企業と連携も加速しそうだ。

 日本の研究機関も今回の打ち上げに関与している。今回のミッション「Artemis I」のSLS(Space Launch System)は、サイズで幅30cm×奥行き20cm×高さ10cm前後、重さ10kgあまりの小型衛星「CubeSat」を10基積載しており、打ち上げ後、月へ向かう行程の中で放出する。CubeSatについては、以前相乗りへの募集がかけられており、このうちの2つの枠を日本が獲得した。宇宙航空研究開発機構(JAXA)の「OMOTENASHI」と、東京大学とJAXAが開発する「EQUULEUS(エクレウス)」である。

小型衛星による月面着陸技術の実証をする「OMOTENASHI」
小型衛星による月面着陸技術の実証をする「OMOTENASHI」
(画像:JAXA)
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 OMOTENASHIは、小型探査機での月面着陸技術の実証を目的としたもの。SLSから離れた後、ガスジェットで軌道を制御しつつ月に近づき、本体下部の固体ロケットで減速しながら月面への着陸を目指す。成功すれば月面着陸した世界最小の衛星となる注1)

注1)打ち上げ後、OMOTENASHIはトラブルを抱え、JAXAは2022年11月22日に、月着陸を実施ができないと判断したことを明らかにした。

水蒸気エンジンを使って軌道制御する技術を検証する「EQUULEUS」
水蒸気エンジンを使って軌道制御する技術を検証する「EQUULEUS」
(画像:JAXA)
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 EQUULEUSは、月周辺の軌道へ向かって小型衛星を制御する技術を検証する。推進系には水エンジンを採用した。水を温めることで発生した水蒸気を噴出する。「水を推進剤として利用できれば、安全で、厳しい環境でも利用しやすい。月や小惑星から水を採取して遠くに飛ぶという将来の宇宙探査シナリオにも合致する」と東京大学大学院 工学系研究科 航空宇宙工学専攻准教授の船瀬龍氏は話す。打ち上げから約1週間をかけて月に接近した後、軌道制御を繰り返しつつ約1年半をかけて目的の軌道に到達する。