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 クラウドのシステムインテグレーションを手掛けるテラスカイが2022年、子会社を2社上場させた。日本では近年、親子上場は減少しているが、同社は今後も子会社上場を増やす考えだ。佐藤秀哉社長は起業家精神を持った「仲間」を集め、現状の20倍以上の売上高を目指すためと狙いを語る。

 今年上場したテラスカイの子会社は、2022年2月24日に東証マザーズ(当時)に上場したBeeXと、2022年9月28日に札証アンビシャスに上場したキットアライブだ。

 BeeXは、ドイツSAPのERP(統合基幹業務システム)をパブリッククラウドへ移行する案件を中心に手掛けるシステムインテグレーターで、2022年2月期の業績は売上高が43億5400万円、営業利益は2億7400万円だった。2023年2月期の業績予測は売上高が52億4300万円で、営業利益が2億8100万円である。

 キットアライブは、親会社であるテラスカイと同じく米Salesforce(セールスフォース)のクラウドのシステムインテグレーションに特化したシステムインテグレーターだ。ただしテラスカイが全国に展開するのに対して、キットアライブは札幌市に拠点を置く。2021年12月期の業績は売上高が5億7700万円で、営業利益は1億1300万円だった。2022年12月期の業績予測は売上高が6億9500万円で、営業利益が1億8000万円である。

親子上場が減少する日本で、子会社上場を加速

 日本では近年、親子上場数が減少している。野村資本市場研究所の集計によれば、日本における親子上場数はピークだった2006年度末(2007年3月末)の417社が、2021年度末(2022年3月末)には219社にまで減少した。子会社上場によって経営が複雑になることが、コーポレートガバナンス(企業統治)上望ましくないとの見方が広がったためだ。

 子会社を相次いで上場させたテラスカイの方針は、こうした傾向に反するものだ。しかも同社は今後さらに子会社を上場させる方針を示す。その理由について佐藤社長は「テラスカイが『3000億円クラブ』の仲間入りを目指すためだ」と語る。

2022年10月に開催した自社イベントで講演するテラスカイの佐藤秀哉社長
2022年10月に開催した自社イベントで講演するテラスカイの佐藤秀哉社長
(写真:日経クロステック)
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 日本の大手システムインテグレーターでも連結売上高が3000億円を超えるNTTデータ、大塚商会、野村総合研究所、伊藤忠テクノソリューションズ、TIS、SCSK、BIPROGYは、営業利益率の水準が高い傾向にある。例えば野村総合研究所の2022年3月期の営業利益率は17.4%にも達する。

 一方、「3000億円クラブに入っていないシステムインテグレーターは営業利益率が低い」(テラスカイの佐藤社長)傾向がある。テラスカイの2022年2月期業績は売上高が125億7800万円で営業利益は6億5800万円。営業利益率は5.2%と3000億円クラブに比べると見劣りする。

テラスカイの営業利益率は「3000億円クラブ」と比べると見劣りする
テラスカイの営業利益率は「3000億円クラブ」と比べると見劣りする
(出所:各社の決算資料を基に日経クロステック作成)
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 経営の安定を目指すのであれば、システムインテグレーターにとって3000億円クラブ入りは欠かせない――。佐藤社長はそう考え、現在の売上高を20倍以上に増やすことを目指している。

スタートアップが増えない・育たない日本に問題提起

 ではどうすれば事業規模を拡大できるのか。そもそも企業にとって社内の従業員の力だけで新規事業を生み出すのは、洋の東西を問わず容易ではない。米国であれば多くの大手IT企業が、スタートアップを積極的に買収することで新しい事業領域を増やしている。しかし日本の場合、特にクラウドの領域では「買収したくなるスタートアップが少ない」(佐藤社長)という問題があった。

 そこで佐藤社長は事業規模を拡大する手法として、起業家としての能力がある人材を社外から招き、テラスカイの子会社としてスタートアップを起業してもらう戦略を打ち出した。日本ではスタートアップが増えにくいだけでなく育ちにくいため、有望なスタートアップにはなかなか出合えないと考えたからだ。