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 医療スタートアップのAMI(鹿児島市)が開発する次世代型聴診器「超聴診器」の実用化が見えてきた。このたび心電と心音を同時計測できる検査装置が医療機器として薬事承認を取得。人工知能(AI)で診断をアシストする機能についても2023年中の承認申請を目指す(図1)。診断アシスト機能が加わった超聴診器が実現すれば、聴診の効率化だけでなく地域医療格差の解決にもつながる可能性がある。

図1 超聴診器を構成する要素
図1 超聴診器を構成する要素
薬事承認を取得した心音図検査装置に、AIで診断をアシストする機能を組み合わせる予定だ。(取材内容を基に日経クロステックが作成、写真の出所はAMI)
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 聴診器といえば医師が首にかている姿が印象的な定番の医療機器である。患者の皮膚に当てたチェストピースで拾った音を、医師が耳にはめたイヤーピースでチューブ(ゴム管)伝いに聞く構造になっているのが一般的だ。AMIによれば聴診器の基本的な構造は誕生から200年以上も変わっていないという。

 そうした長い歴史を持つ聴診器にイノベーションを起こそうとしているのが超聴診器である。AMIによれば、超聴診器はAIによって医師の診断をアシストする機能を搭載した「医師の耳と脳を超える聴診器」だ。特に、大動脈弁狭窄(きょうさく)症や心不全といった心疾患の早期発見への貢献を目標とし開発が進められている。

 これらの疾患の検査では医師が聴診器で心音を聞くだけでなく、心電計を用いて心電図を取得し分析するといった作業が必要になる。従来の聴診器による聴診は医師の経験やコンディション、周囲の環境音などに左右され、心電図を取得するための技師も不足しているという課題があるという。

検査装置と診断アシストAI、2つの医療機器で構成

 超聴診器の構成要素は、患者の胸に当てて心音と心電を計測する検査装置本体と、計測データの可視化機能などを持つパソコン用のソフトウエア、そして計測データを解析して診断をアシストするAIの大きく3つに分かれる。2022年10月に特定保守管理医療機器(クラスII)として薬事承認を取得したのは本体とソフトウエア部分で、AIによる診断アシスト機能はまだ実装されていないが、現時点でも新型の心音計として使うことができる(図2)。

図2 心音図検査装置の利用イメージ
図2 心音図検査装置の利用イメージ
検査装置本体を患者の胸に当てて使用する。計測データはパソコンの画面上で確認できる。(出所:AMI)
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 検査装置本体はハンドヘルド型で、患者の胸に1分間ほど当てて心音と心電を計測する。計測データは有線もしくはWifiでリアルタイム転送され、グラフィックイメージとして確認できる。心音と心電を同期表示するため心臓の周期も分かりやすい。また外部のヘッドホンを本体に接続することでリアルタイムに聴診しながら検査することも可能だ。AIで解析することを見据え、雑音やアーチファクトといったノイズを抑えた波形を取得するためのセンサーも連携企業と共同開発した。

 目下進めるのが医師の診断をアシストするAIの開発だ。AMI取締役COO(最高執行責任者)の神尾翼氏によると、検査装置で取得した心音・心電を時系列の数値データとして解析するモデルと、心音図や心電図という画像として解析するモデルの2つのアプローチで開発を進めている。

 機械学習モデルの構築に用いる心音・心電のデータとしては、被検者約3000人の体の各4カ所、計1万2000データを臨床研究で収集した。「ほぼ構築は済んでおり細かいチューニングをしている段階だ。最終的にはより精度が高いモデルを承認申請にかけることになる。2023年中の申請を目指したい」(神尾氏)