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 サントリーは2023年6月から、製品の輸送に使用するパレット回収の予測にAI(人工知能)を活用した新システムを導入する。このAIの機械学習モデルの開発は、サントリーグループのITを担うサントリーシステムテクノロジー(大阪市)が担当する。同社は、2022年1月に機械学習モデルをパレット回収に利用するための検証を始めた。

 パレットは製品の輸送に使うもので、出荷後に回収して再利用する。パレットは、工場と出荷倉庫、卸店の3者の間を往来する。製品は卸店から小売店に届けられ、それを消費者が購入する。

 問題なのは、卸店の製品在庫がなくなるタイミングが小売店での消費者の需要に左右される点だ。卸店では、製品在庫がなくならない限りパレットを返却できない。ところがパレットの数は限られているため、回収の予測を見誤ると工場からの出荷に使うパレットが足りなくなる。こうなると製品を出荷できず、損害が発生する。

 従来は、回収されるパレットの量を物流現場の担当者が経験や感覚を基に予測していた。しかしこれでは、精度の低さや属人化といった問題を避けられない。どうにかしたいという現場からの相談がきっかけで、回収予測にAIを適用することになった。

 2022年1月から7月までの期間、このAIを検証する中で、課題が見えてきた。具体的には、予測結果と実績を照らし合わせるまでAIの精度の劣化を把握できない点や精度劣化の原因がわからない点などだ。サントリーシステムテクノロジーの高木基成先端技術部課長は、「AIの精度が劣化している原因がわからなければ、学習データをゼロから入れて、モデルを新たに開発しなければならない」と話す。AIの精度を維持するための運用にはこうした課題がある。

 AIモデルの運用には、主に3つのサイクルがある。「構築したモデルのバージョン管理」「モデルの監視・性能評価」「新しいデータによる再学習」だ。精度の低下などが見られた場合は、再学習で性能の強化を目指す。このとき、AIの精度を下げている要因を分析したうえで再学習する必要がある。再学習したモデルは新たなバージョンとして継続的に運用する。こうした一連の流れを繰り返す。

AIモデルの運用・保守工程とサービスの関係
AIモデルの運用・保守工程とサービスの関係
(サントリーシステムテクノロジーの資料を基に日経クロステックが作成)
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 この運用において、スタートアップのCitadel AI(東京・渋谷)が開発した2つのツールを導入した。AIが持つバイアスや精度のばらつきなどを自動テストする「Citadel Lens(シタデルレンズ)」と予期せぬ環境変化に伴うAIの異常を検知する「Citadel Radar(シタデルレーダー)」だ。これらを精度劣化の原因を見つける過程で利用した。