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 「カメラ校正の世界観を塗り替えた」。こう自信を見せる36歳の若手エンジニアが、パナソニック ホールディングス(パナソニックHD) プラットフォーム本部にいる。わずか2年で、撮影画像のゆがみなどを高精度推定する手法を編み出した若井信彦氏だ。「従来手法の場合では27年間かかる学習時間をわずか1日に短縮できた」(同氏)という(図1)。

図1 「画像校正に革新をもたらした」と話すパナソニック ホールディングス プラットフォーム本部の若井信彦氏
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図1 「画像校正に革新をもたらした」と話すパナソニック ホールディングス プラットフォーム本部の若井信彦氏
社内研究グループ「REAL-AI」に所属し、中部大学 教授の山下隆義氏の下で研究を進めた。何度も論文採択に挑戦できることが同研究グループの強みの1つとし、「この環境が採択につながった理由の1つ」(パナソニックHD)と語る(写真:パナソニックHD)

写真の傾きやゆがみを瞬時に直せる

 提案法を使えば、斜めに撮影した画像や、広角・魚眼レンズで撮影したゆがみのある画像を瞬時にゆがみのない水平の画像に直せる。しかも、その変換を行うための変数(パラメーター)抽出に必要となるのは画像1枚のみ。これまでは「どの程度傾いているか」といった情報を得るためには同じ風景を撮影した複数枚の写真が必要だった。「スマホやカメラ本体のみで(自動的に)画像補正できるようになる」と若井氏は語る(図2)。

図2 従来法では難しかった1枚画像からの高精度補正を実現
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図2 従来法では難しかった1枚画像からの高精度補正を実現
(出所:パナソニックHD)

 こうした革新性から、若井氏の論文は「採択率28%」という狭き門を突破した。採択されたのは、コンピュータービジョン分野の3大学会の1つ、「ECCV 2022(European Conference on Computer Vision、開催は2022年10月末)」である。「大規模画像データセットと実カメラで検証し、世界最高精度を実現したことが採択につながった」と若井氏は説明する。

 実際に若井氏が論文で提案したのは、(1)最小限の変数でレンズのゆがみを表現するカメラモデル、(2)誤差関数の最適な重み(係数)を算出する手法、という2点である。組み合わせれば、少数の魚眼レンズだけで広い空間の画像認識などに役立てられるようになる(図3)。

図3 若井氏の提案法の概要
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図3 若井氏の提案法の概要
(出所:パナソニックHD)