日産自動車は、シリーズハイブリッド機構「e-POWER」用のエンジンを新開発した。2022年11月28日に発表した新型「セレナ」のe-POWER車に搭載する。同社がe-POWER専用のエンジンを実用化するのは、今回が初めてだ。スターターモーター(以下、スターター)の設置を想定しないことやバランサーシャフトを装備するなど専用設計とすることで、エンジン振動を低減しているのが特徴だ。
現行型セレナのe-POWER車に採用したエンジンは、直列3気筒で排気量1.2Lの「HR12DE」である。小型車を中心に搭載してきたエンジンをe-POWERの発電用として流用していた。
今回新たに開発したe-POWER専用のエンジンは、直列3気筒で排気量1.4Lの「HR14DDe」だ。駆動用エンジンからの流用で課題となっていた点を改善した。
エンジン音や振動が違和感に
e-POWERでは、エンジンを発電用として使用する。電池に蓄えた電力が少なくなるとエンジンをかけて発電する仕組みだ。車速に応じて回転数が上がるわけではないため、運転者の意図しない場面でエンジン音や振動が発生し、運転者に違和感を与える場合があった。
新開発した発電専用エンジンの最大の特徴は、スターターの設置を想定していないことである。HR12DEでは、e-POWER向けに流用する際にスターターを省いていた。このため、スターターがあった位置に空間ができ、ここから振動や音が発生していた。
HR14DDeは、最初からスターターの設置を想定しない設計とすることで、従来のエンジンにあったスターターの空間を無くした。これにより、「振動に強くなった」(同社パワートレーン・EV技術開発本部パワートレーン・EVプロジェクトマネージメント本部e-POWERプロジェクトマネージメントグループパワートレーン主管の重元俊介氏)という。具体的には、スターターを省いた空間で起こるたわみを無くせたと同時に、エンジンと駆動用モーターとの結合部の剛性を高められた。
振動対策は他にもある。今回のHR14DDeは直列3気筒で、4気筒エンジンと比較すると振動が大きくなる傾向がある。そこでクランクシャフトから発生する振動を抑制するため、バランサーシャフトを設置した。バランサーシャフトがクランクシャフトによって発生する振動と逆位相の振動をつくることで、振動を打ち消し合う効果がある。