全2023文字
PR

 異なるブロックチェーン間でデジタル証券を即時決済する「クロスチェーン決済」に向けた技術開発に、三菱UFJ信託銀行が乗り出した。ブロックチェーン技術ベンチャーのDatachainと組み、ステーブルコインを用いた異なるブロックチェーン基盤間での即時決済システムを2024年にも商用化する。

 利用者は約定後すぐにデジタル証券を手に入れられるようになる。現状は約定から証券を取得するまでにタイムラグがあり、デジタルと言いながらアナログ時代の制約が残っていた。異種ブロックチェーンをまたいだクロスチェーン決済が商用化すれば、デジタル証券が真価を発揮する「シン・デジタル証券」への道が開ける。

三菱UFJ信託銀行とDatachainが商用化を目指す、クロスチェーン決済の実証実験の概要
三菱UFJ信託銀行とDatachainが商用化を目指す、クロスチェーン決済の実証実験の概要
(出所:Datachain)
[画像のクリックで拡大表示]

 三菱UFJ信託銀行とDatachainが開発するのは、ステーブルコインの発行・管理基盤システムの一種「Progmat Coin(プログマコイン)」を使ったデジタル証券のクロスチェーン決済技術だ。Progmat Coinは三菱UFJ信託銀行が開発中の基盤システムで、2023年中に1円=1コインと日本円に裏付けされたステーブルコインを発行する予定だ。

 両社が具体的に実現を目指すのはデジタル証券の「DVP(デリバリー・バーサス・ペイメント)決済」だ。証券の引き渡しと代金の支払いを相互に条件付けて行う仕組みで、資金証券同時決済とも呼ばれる。証券の引き渡しと決済を同時に実行することで、証券の取りはぐれを防ぐための仕組みだ。

デジタルなのに「伝統的な有価証券のまま」

 異なるブロックチェーンをまたいだデジタル証券のDVP決済が可能になれば、デジタル証券取引において買い手は約定すると即時に証券を手に入れられる。具体的には買い手はステーブルコインを売り手に送付し、売り手はデジタル証券を買い手に送る。これら一連の決済とデジタル証券の送付を、異なるブロックチェーンを横断して即時に実行する。

 デジタル証券取引なのだから、約定すると即時に証券を入手できるのは当然のように思えるかもしれない。しかし現状は約定後に買い手がデジタル証券を得られるのは「T+2」、つまり2営業日後になってしまう。現状はデジタル証券の決済に円をはじめとする法定通貨を使う必要があるため、売り手と買い手それぞれの証券口座間で事務手続きや銀行口座間での送金といった手続きが必要だからだ。「デジタルなのだからパッと買ってピッと決済できそうに思えるが、デジタル証券のクロスチェーン決済ができていないと、伝統的な有価証券の顧客体験のままになってしまう」(三菱UFJ信託銀行の斉藤達哉デジタルアセット事業室プロダクトマネージャー)。