日産自動車が2022年11月28日に発表した中型ミニバンの新型「セレナ」は、単眼カメラを使って「レベル2+」の先進運転支援システム(ADAS)「プロパイロット2.0」を実現した。同システムは、新たに追加した最上級グレード「LUXION(ルキシオン)」に標準搭載した。プロパイロット2.0に単眼カメラで対応するのは、今回が初めてである(図1)。
同社のプロパイロット2.0は既に、新型電気自動車(EV)「アリア」に搭載されている。高速道路や自動車専用道路の同一車線内での手放し運転を可能とする機能「ハンズオフ」や「車線変更支援機能」を実現する。車両前方を監視する主要センサーには、ドイツZF製の3眼カメラを使う。
3眼カメラを使うプロパイロット2.0は、スポーツセダン「スカイライン」のハイブリッド車(HEV)にも搭載されていたが、同HEVは既に生産終了になっている。スカイラインのガソリンエンジン車は、プロパイロット2.0を搭載していない。これに対して、新型セレナの最上級グレード(以下、新型車)のプロパイロット2.0では、3眼カメラを単眼カメラに変更してコストを抑えながら、3眼カメラを使う場合と同じ機能を実現した。(図2)。
日産は3眼カメラから単眼カメラへの変更に合わせて、カメラのサプライヤーも変えた。ただ、日産Nissan第二製品開発本部Nissan第二製品開発部で第三プロジェクト統括グループ車両開発主管を務める黒田和宏氏は、「日本のサプライヤーから調達している」と述べるにとどめ、具体的な調達先は明かさなかった。
スカイラインのHEVに搭載していたZFの3眼カメラは、車両前方の遠距離・中距離・近距離の状況を1台のカメラで把握できる。遠距離用カメラは水平視野角28度で、検知距離は300m程度である。中距離用カメラの水平視野角は52度で、検知距離は120m程度。近距離用カメラは水平視野角150度で、検知距離は20mとなっている(図3)。
これに対して新型車では、「3眼カメラの機能を1台の単眼カメラで実現した」と黒田氏は話す。日産がプロパイロット2.0で3眼カメラを採用したのは、車線変更機能を提供するために必要だったからである。近距離だけでなく遠距離の情報を捉えることで、隣接する車線の車両や遠くの対象物を検知しやすくなる。新型車の単眼カメラは、従来の単眼カメラでは難しかったこれらの課題を乗り越えた。