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クアルコムでXR事業を主導するHugo Swart氏。ARグラス向け半導体製品を手にしている。(写真:日経クロステック)
クアルコムでXR事業を主導するHugo Swart氏。ARグラス向け半導体製品を手にしている。(写真:日経クロステック)
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 米Qualcomm Technologies(クアルコムテクノロジーズ)がAR(拡張現実)の市場開拓に本腰を入れている。AR用眼鏡型端末(ARグラス)に向けて新たに専用の半導体製品を開発。ARアプリの開発環境も整備するなど、ハードウエアとソフトウエアの両面でARに注力する。他社に先駆けて投資し、優位性を確保する考えだ。

 「我々は、いち早く新技術に投資してエコシステムを構築するというサイクルを繰り返してきた。それをARでも行う」。クアルコムでARやVR(仮想現実)、MR(複合現実)といった「XR」事業を主導するHugo Swart氏(クアルコムテクノロジーズのXR担当のVP兼GM)は、AR向け新製品を投入する狙いをこう語る。同社は2022年11月の自社イベントで、ARグラス向けの新しい半導体製品「Snapdragon AR2 Gen 1 Platform」を発表した。これまでXR用ヘッドマウントディスプレー(HMD)に向けた半導体製品は手掛けてきたが、AR向けに特化した製品は今回が初めてである。

 XRの市場は立ち上がったばかりだが、同市場でクアルコムは優位だ。特にVR向けでは存在感が高い。VR用ヘッドセットで高いシェアを誇る米Meta Platforms(メタ)の「Quest」シリーズに採用されているからだ。中でもQuest 2はヒットし、2021年末時点で累計出荷台数は1000万台を超えたとされる。2022年10月発売の「Meta Quest Pro」でも、メタはクアルコム製の半導体製品を採用した。

 クアルコムの既存のXR向け製品は、ARにも使えるものである。それでもあえてARに特化した製品を発表したのは、ARグラスで求められる、高い演算処理性能と低消費電力の両立、ならびに小型化を達成するためだ。そのために、新製品ではスマートフォンとの接続を前提にし、負荷が大きい演算や移動通信といった消費電力が大きい処理をスマホが担う分散処理型の構成にした。

ARグラスの小型化や消費電力削減のために、スマホと接続して利用する(写真:日経クロステック)
ARグラスの小型化や消費電力削減のために、スマホと接続して利用する(写真:日経クロステック)
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 加えて、半導体製品自体の消費電力も削減した。1W未満と従来比で約半分にしつつ、演算処理性能を高めた。AI(人工知能)の推論処理性能は、従来比で最大2.5倍にした。これにより、従来に比べて遅延時間が短いハンドトラッキングが可能になる。

 スマホと接続するので、スマホ側の各種機能をARグラスでも利用できるようになる。同じタイミングで発表したモバイル向けの新しい半導体製品「Snapdragon 8 Gen 2 Mobile Platform」では、各種AI処理を強化した。オンデバイスで英語やスペイン語、中国語をリアルタイムで翻訳できる。この翻訳結果をスマホからARグラスに送信して表示すれば、異なる言語を使う人とスムーズに会話しやすくなる。