ソフトバンクは2022年11月25日、土砂やがれきで生き埋めになった遭難者のスマートフォンの位置を特定するシステムを報道公開した。2機のドローンを飛ばして地中に埋まったスマホの電波を捉え、その強さが最大となる位置を探し出す。地上から有線でドローンに給電する仕組みを採用して100時間以上の連続運用を可能にした。2023年度以降の実用化を目指す。
異なる役割の2機のドローンが連係
同システムはソフトバンクと東京工業大学工学院の藤井輝也研究室、双葉電子工業で共同開発した。今回のデモンストレーションでは、千葉県長生村にある双葉電子の工場内に土砂の山を築き、地中4メートルの深さに埋めたスマホの位置を上空のドローンから誤差数メートルで特定することに成功した。
2機のドローンはそれぞれ異なる役割を担う。1機は捜索現場の上空からスマホの位置を探索するための「センサー」として働く。携帯電話の電波を送受信する中継局を搭載しており、地上に向いた指向性アンテナによって、スマホが出す電波の強さを測定し続ける。ドローンとスマホでやり取りする電波には、土砂やがれきによる減衰の影響が比較的少ない900メガヘルツ帯の周波数を利用しているという。
このドローンではGPS(全地球測位システム)の信号も受信している。ドローンの飛行経路上でスマホの電波の受信電力が最も大きい場所をGPS情報で特定し、スマホの位置として記録する。取得した位置情報は遠隔地からパソコンやスマホで確認できる。
もう1機のドローンは給電ケーブルを空中に持ち上げるための補助役だ。スマホ探索用のドローンから地上の給電装置まで給電ケーブルを直接伸ばすと、捜索現場まで飛行する途中で倒木や倒壊した家屋などに引っ掛かるなどで捜索範囲が限定される恐れがある。
そこで補助ドローンが給電ケーブルを持ち上げることにより、障害物を回避して広範囲で捜索可能にしたわけだ。今回のデモでは、給電装置から土砂の山までが約200メートルで、その間に高さ約10mの木々などがある環境でも、ドローンでスマホの位置を特定できることを示した。