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 医薬品の臨床試験(治験)でブロックチェーン技術の活用が始まった。製薬スタートアップのアキュリスファーマ(東京・港)が2022年11月、睡眠障害であるナルコレプシーを対象とした医薬品の治験(フェーズIII)を開始。この治験ではサスメド(東京・中央)が開発した治験管理システムを導入しており、そこでブロックチェーン技術が用いられている。治験データの信頼性を確保しつつ工数を削減できるため、開発費の軽減につながると期待される。

ブロックチェーン技術を応用した治験管理システム導入の効果
ブロックチェーン技術を応用した治験管理システム導入の効果
治験管理システムを導入することで、モニタリングにおける人による作業の一部が必要なくなったり作業量が減ったりする。そのため、治験にかかるコストの削減につながる。ブロックチェーン技術を介したデータは改ざんが困難になるため、データの信頼性を担保できる。(出所:日経クロステック)
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 製薬企業は「医薬品の臨床試験の実施の基準に関する省令」〔以下、GCP(Good Clinical Practice)省令〕に沿って医薬品の治験を実施しなければならない。治験がGCP省令に沿って実施されているかどうかを監視する作業を「モニタリング」と呼ぶ。具体的には、電子カルテを基に作成されたワークシートから必要なデータを転記して報告書にまとめたり、その報告書のデータが元のデータと相違がないか確認したりする。製薬企業や医薬品開発業務受託機関(CRO)が実施する。

 モニタリングは従来、多くの人手を必要としていた。人手を介す工数が多いと、人件費によって開発コストが増大するだけではなく、データの書き換えなどのリスクが生じやすい。今回、アキュリスファーマは治験のモニタリングにおいて、データの改ざんが難しいブロックチェーン技術を用いた治験管理システムを導入した。

 医療機関が専用の電子ワークシートにデータを入力すると、そのデータが治験管理システムを通じて報告書に同期されるため、人手による転記作業や照合作業を省略できる。サスメド社長の上野太郎氏は「データ転記やデータ照合の業務量を減らせるため、製薬企業にとっては治験コストの削減につながる」と話す。モニタリングに従事する人数が少なくてもデータの品質を確保できるため、CROにとっては対応できる治験の数を増やせるというメリットもあるという。