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「NeurIPS 2022」の展示スペース。左上はメタ、左下はグーグル、中央はアップル、右はバイトダンスのブース(写真:日経クロステック)
「NeurIPS 2022」の展示スペース。左上はメタ、左下はグーグル、中央はアップル、右はバイトダンスのブース(写真:日経クロステック)
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 2022年11月下旬から12月上旬にかけて開催されたAI(人工知能)分野の国際会議「NeurIPS 2022」で、これまでにない光景が見られた。同分野の優秀な学生や研究者が職を求めて日本企業に押し寄せているのだ。背景には、米大手IT企業の人員削減や採用凍結、ならびに中国企業の出展撤退などがある。

 NeurIPSは、AI分野の「トップカンファレンス」と位置付けられている。毎年最新の研究成果が発表され、優秀な学生や研究者、技術者などが集う。論文の採択率は20~30%と狭き門だ。

 多くの優秀な人材が集まるため、企業は採用活動に熱心だ。展示スペースにブースを構え、最新成果を披露したり、説明員を配置したりしてアピールしている。

NeurIPSは採用活動の場になっている。採用募集の紙が多数張り出されており、参加者はそれらを熱心に読み込んでいる(写真:日経クロステック)
NeurIPSは採用活動の場になっている。採用募集の紙が多数張り出されており、参加者はそれらを熱心に読み込んでいる(写真:日経クロステック)
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 このように人材採用の場として機能しているNeurIPSの展示場だが、2022年は異変が生じていた。大手中国企業が軒並み撤退したのである。以前はアリババ集団や百度(バイドゥ)など複数の中国企業がブースを構えていた。ところが、こうした企業が「ごっそりいなくなった」(NeurIPS参加者)。目立っていたのは、動画共有アプリ「TikTok(ティックトック)」を手掛ける字節跳動(バイトダンス)のブースくらいだ。

 減ったのは中国企業だけではない。「中国から渡航してくる中国人参加者も激減した」(NeurIPS参加者)。実際、2022年のリアル参加者は1万300人と、新型コロナウイルス禍前の最後のリアル開催となった2019年の1万3000人を下回った。オンライン参加者は3160人と、リアルで減った分がそのままオンラインに移行したようだ。

 リアル参加者が減った分、「ポスターセッションの会場が例年より空いていた。新型コロナ禍前は発表者に話を聞けないどころか、会場も歩けないほど混んでいた」(NeurIPS参加者)という。もっとも、中国からの渡航・参加者が減っただけで、米国の企業や大学に所属する中国系の人々は数多く参加しており、依然としてAI分野における中国勢の強さは変わらない。

NeurIPS 2022のポスターセッションの様子。大きなホールに多数の参加者が押し寄せる(写真:日経クロステック)
NeurIPS 2022のポスターセッションの様子。大きなホールに多数の参加者が押し寄せる(写真:日経クロステック)
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