ソニーグループ傘下で半導体を手掛けるソニーセミコンダクタソリューションズ(SSS)とその子会社であるソニーセミコンダクタマニュファクチャリング(以下、SSSグループ)は、3次元(3D)センシング向け半導体素子の性能を大幅に高めた。AR(拡張現実)や自動運転などで求められる、屋外での高精度な3D測定の実現につながる。
今回、測距に悪影響を及ぼす太陽光に対する耐性を高めるために微細化しつつ、業界最高水準の高い変換効率を達成。その成果を2022年12月上旬に開催された半導体分野の著名な国際学会「IEDM 2022(68th International Electron Devices Meeting)」で発表した。
SSSグループは今回、「SPAD(Single Photon Avalanche Diode、単一光子アバランシェダイオード)」と呼ばれる半導体素子の性能を高めた。モバイル向けARや自動運転における3D計測に利用するLiDAR(レーザーレーダー)の受光素子として用いる。
こうしたLiDARでは一般に、ToF(Time of Flight)方式で測距する。近赤外のレーザー光を照射し、対象物で反射して戻ってくるまでの時間を算出して距離を測る。
ToF方式は、間接方式(インダイレクトToF、iToF)と直接方式(ダイレクトToF、dToF)の2つがある。このうち長距離測距に向くのがdToFである。SPADをアレー状に並べたものをdToFの受光素子として用いる。
SPADは、入射してきたフォトン(光子)数を数えるフォトンカウンターとして利用できる。入射した1つの光子から大量の電子と正孔のペアを雪崩のように大量に生じさせる「アバランシェ(雪崩)現象」を利用して受光感度を高めている。
ARや自動車で用いるLiDARは屋外で利用する。その際、課題となるのが太陽光だ。太陽光が強いほど、対象物に反射して戻ってきたToF用の近赤外光の光子をカウントしにくくなり、測距に悪影響を及ぼす。1画素で同時にカウントできる光子数は1個のみで、複数の光子が同時に同じ画素に入射した場合、複数をカウントできないからだ。
その対策として、SPADの画素ピッチを縮小する手段がある。今回、2.5μmにまで縮めた。従来のSPADの画素ピッチは10μmや6μmだった。