産業技術総合研究所(AIST)は2022年12月、カーボンニュートラル社会の実現を目指した、再生可能エネルギーを基に合成燃料(e-fuel)を製造するシステムを報道陣に公開した。現時点で合成できるe-fuelは、1日数ccと少ないが、2023年度には現時点の約300倍の規模のプラントを構築し、1日数Lを生産できるようにする計画である。
これらは、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)などが進める複数の国家プロジェクトに基づく(図1)。例えば、グリーンイノベーション基金事業「CO2等を用いた燃料製造技術開発プロジェクト/合成メタン製造に係る革新的技術開発/SOECメタネーション技術革新事業」や「次世代FT反応と液体合成燃料一貫製造プロセスに関する研究開発」事業などだ。後者は、2020~2024年度の5年間の開発プロジェクトにおける取り組みである。
今回、AISTが公開したのは、これらのプロセスで重要な役割をする2つの装置/システムだ。(1)水(H2O)と二酸化炭素(CO2)とを同時に電気分解して水素(H2)と一酸化炭素(CO)と酸素(O2)に変換するSOEC(Solid Oxide Electrolysis Cell、固体酸化物形電解セル)の装置、(2)(1)の生成物であるCOとH2の合成ガスを基に、各種の液体合成燃料(e-fuel)をFT(フィッシャー・トロプシュ)法で製造するシステム――である。
(1)は、H2と空気中のO2を基に、電力とH2Oを取り出す固体酸化物形燃料電池(SOFC)の逆反応、つまり 2H2O+CO2 → 2H2+CO+3/2O2 という反応を進める装置である(図2)。H2OとCO2を共に燃料極で電気分解することから、共電解(co-electrolysis)とも呼ぶ。
SOECのセルは燃料極側にニッケル(Ni)と触媒、酸素極側にジルコニウム(Zr)酸化物材料などを用いているという。このSOECの反応を進めるには温度をセ氏700~800度を保つ必要がある。しかも、吸熱反応であるため、外部から熱を供給し続けなければならない。