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 ボールペンやシャープペンシルなど文具の開発・販売を手掛けるぺんてるは、オフィス内にIoT(インターネット・オブ・シングズ)の技術や人工知能(AI)をテストする基盤を2021年に構築。その基盤を用いて、サーバー室の温度や湿度をリモートで監視するシステムや、会議室などの使用状況を把握するシステムを開発した。

 もともとぺんてるは、2019年から工場のIoT化に取り組んできた。品質や製造効率を高めるため、生産ラインで稼働する製造装置の状態をセンサーで計測し、そこから収集したデータを分析してきた。こうした社内でのデジタル活用を加速するため、2020年に社内の情報システム部門を「デジタルシフト課」と改め、経営戦略室の直下に置いた。既存システムの維持・運用などに加え、工場のIoT化をはじめとする社内のデジタル活用に取り組んでいる。

 しかしIoT化を進めるうえで制約となったのが、IoTシステムの検証環境。当初は工場の本番環境しかIoTシステムが存在しなかった。経営戦略室の松川満デジタルシフト担当部長は「新しい技術を試したいと思っても本番環境では気軽に検証できない。気軽にIoT技術やAIをテストできる環境が欲しいと考えていた」と話す。

 もう1つ問題となっていたのが、IoT関連のノウハウの習得だ。「工場のIoT化に関わっているメンバーだけでなく、既存システムの維持・運用などを担当しているメンバーにもIoTに関するノウハウを習得できる機会を設けたかった」(松川担当部長)。背景には「ある程度順調にIoT化できた」(松川担当部長)工場に対し、オフィスのIoT化が遅れているという認識だ。そこでIoT技術やAIの開発やテストが行えるIoT基盤をオフィス内に構築することにした。

 IoT基盤の構築にはアステリアの「Gravio」を採用した。センサーやIoTゲートウエイ、管理ソフトウエアといったIoTシステムに必要な技術要素が一体で提供され、プログラミング作業なしでシステムを開発できる点を評価した。松川担当部長は「スピード感を持ってデジタル活用を進めるためにも、自分たちの力で可能な部分は内製できるようにしたい。そのためにも、短期間かつノーコードでIoTシステムを開発できる環境に慣れておいたほうがよいと考えた」と話す。