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 豊田自動織機は、自動車向けの樹脂製ウインドーを従来に比べて4割低コストで製造できる新工法を開発した(図1)。加工性を高められる新開発のコート剤を採用することで、ポリカーボネート(PC)製ウインドーの製造工程を簡略化した。ガラスより軽い従来の特徴に加え、低コスト性も訴求し、PC製ウインドーの拡販を目指す。

図1 新工法で製造したパノラマルーフ用の樹脂製ウインドー
図1 新工法で製造したパノラマルーフ用の樹脂製ウインドー
新工法でコストを低減できたほか、製造できるウインドーの最大サイズを従来の約2倍となる3m²に大型化できた。(写真:豊田自動織機)
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 同社は1990年代に樹脂製ウインドーの開発を開始した。以来、トヨタ自動車のハイブリッド車(HEV)「プリウスα」のパノラマルーフや、「レクサス」ブランドのスポーツ車「LFA」のクオーターウインドーなどに採用されてきた(図2)。

図2 トヨタのHEV「プリウスα」
図2 トヨタのHEV「プリウスα」
2011年に発売し、当時トヨタとして初めて樹脂製のパノラマルーフを採用した。(出所:トヨタと豊田自動織機の画像を基に日経Automotiveが作成)
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 PC製ウインドーの特徴は、質量がガラスの約2分の1と軽いうえ、割れにくく自由な形状に成形できることだ。採用することで車体を軽量化できる。燃費性能や電気自動車(EV)における電力消費率(電費)の性能向上に寄与するため「引き合いが増えている」(豊田自動織機の担当者)という。

 ウインドーのような従来はガラス製の部品や金属製の部品を代替する、樹脂などを射出成形して造った部品を「グレージング」と呼ぶ。調査会社のグローバルインフォメーションによると、自動車用PC製グレージングの市場規模は、2021年の11億1000万米ドル(1米ドル135円換算で約1500億円)から年平均11.9%で成長し、2028年には24億5000万米ドル(約3300億円)に達するという。

 軽量化を背景に需要が高まるPC製ウインドーだが、コストはガラス製ウインドーより高い。PC製ウインドーには紫外線(UV)で透明度が落ちやすく、傷が付きやすいといった弱点がある。これらを抑えるためのコート剤を塗布する工程が、コスト上昇につながっていた。