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 DX(デジタル変革)を推進するには人工知能(AI)の存在が欠かせない。しかしAIの管理に頭を悩ませる企業は多い。AIの中核となる機械学習モデルは一度つくって導入すれば終わりではない。ビジネス環境の変化に応じて、継続して育てていかなければならないからだ。

 そこで注目されるのが、AIをリリースした後の運用・保守フェーズで継続的に改良する「MLOps」という考え方である。MIXIはMLOpsを実現するため、開発基盤を整えている最中だ。Webブラウザー版も含めて利用者数が1500万人を突破した子どもの写真・動画共有アプリ「家族アルバム みてね」の開発事例を基に、MLOpsの勘所を解説する。

AIの運用が課題に

 みてねアプリには、家族の写真・動画からダイジェスト動画を作成する「1秒動画」や、アップロードした写真・動画を子どもごとに自動分類して月齢ごとにコメントやメモを保存する「人物ごとのアルバム」がある。この裏側では、複数のAIが稼働しており、さまざまな処理を自動化している。

「みてね」のWebサイト
「みてね」のWebサイト
(出所:筆者がキャプチャー)
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 MIXIがMLOps基盤を本格的に導入したきっかけの1つは、2020年にリリースした「人物ごとのアルバム」だった。写真や動画の中から人の顔を検出し年齢や性別などを予測する機能である。この機能を追加するため、新たな機械学習モデルを投入することになった。

 このAI機能を追加したころから「MLOpsを検討するようになった」(MIXIの松石浩輔 Vantageスタジオ みてね事業部 Data Engineeringグループ エンジニアリングマネージャー)という。機械学習モデルは日々進化するため、使っているモデルよりもコストがかからず、高速に動作するものが登場する。

 そのため継続的なモデルの更新や運用が必要となるが、従来は「AI機能をつくって終わりとなることが多かった」(松石エンジニアリングマネージャー)。また、開発基盤がAIごとに異なっていたため、ソフトウエアライブラリーやOS(基本ソフト)などのアップデートに手間がかかるようになってしまった。