自治体がデータを利用して地域の活性化を図ったり、課題をより正確に把握したりするための取り組みが活発になっている。その基になるのがEBPM(証拠に基づく政策立案)という考え方だ。2022年12月に開催された第51回行政改革推進会議では行政事業レビューにおけるEBPM推進のための案が提示されるなど、EBPMへの注目度は高い。
神戸市はデータ活用に積極的な自治体の1つだ。職員が主体となって、LGWAN(総合行政ネットワーク)上に保存していた住民基本台帳のデータなどを加工して連携する基盤を整備し、BI(ビジネスインテリジェンス)ツールである「Tableau」を用いて分析・可視化している。
神戸市は2022年6月、約6600万円の予算を投じて、全庁でダッシュボードを共有するためのポータルサイト「神戸データラウンジ」を公開した。各庁が政策立案に活用しているほか、サイトは職員自らが作成するなどの工夫も盛り込まれている。同年10月にはこのデータ活用の取り組みで、総務省の賞を受けた。
神戸市の松尾康弘企画調整局政策課データ利活用担当係長は「(政策立案の)初期段階からデータに基づいた議論ができるようになった」と胸を張る。今では職員が打ち合わせの場で欲しいデータを瞬時に整理して、ダッシュボードを見ながら議論することが当たり前になったという。2022年10月時点で24種類、83ダッシュボードを実装した。
ダッシュボードが特に力を発揮するのは予算編成の過程での議論だ。例えば2021年度には、翌年度予算要求に向け保育施設の最適な配置場所を考えるに当たり、区ごとに保育所の定員数と入所数の推移をグラフ化した。状況を把握した上で子供の人口予測、保育所の利用率、共働き比率といった他のデータを踏まえて検討することができた。「保育所の利用率が上がれば共働き率も上がるなど、今まで見えなかったことがどんどん見えてきた」(松尾係長)。
オープンデータを使い、見やすい形にして一般に公開する試みも行っている。神戸市のホームページには、他自治体ではなかなか見かけない「統計ダッシュボード」というメニューがある。ここには「人口と世帯数」「グラフでみる神戸市統計書」など7つの項目があり、それぞれの項目には「推計人口と世帯数の推移」「最新の人口」といった様々な統計データがグラフ形式で公開されている。数値がただ並ぶより分かりやすい。