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 「売上高に占める比率が2021年は31%だった半導体・電子材料を、2030年には45%まで成長させる」

 レゾナック代表取締役社長の髙橋秀仁氏は、2023年1月17日に開かれたレゾナック発足説明会でこう宣言した。

レゾナック代表取締役社長の髙橋秀仁氏
レゾナック代表取締役社長の髙橋秀仁氏
持株会社のレゾナック・ホールディングスの代表取締役社長も兼ねる。(写真:日経クロステック)
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2030年までに再編成する事業ポートフォリオ
2030年までに再編成する事業ポートフォリオ
(出所:レゾナック・ホールディングス)
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 昭和電工と昭和電工マテリアルズ(旧日立化成)が統合し、2023年1月1日に発足したレゾナック*1。髙橋氏は、同社を従来の石油化学中心の総合化学メーカーから機能性化学メーカーへ脱却させ、「経営資源を半導体電子材料に集中投入する」と表明した。

*1 レゾナック発足に合わせて持株会社に移行し、昭和電工が持株会社のレゾナック・ホールディングスに、昭和電工マテリアルズが事業会社のレゾナックに改称した。

 こうした変革を顕著に示すのが半導体・電子材料への注力だ。2021年の全社売上高は約1兆4196億円で、そのうち31%を半導体・電子材料が占める。これを2030年には全社売上高を約1兆8000億〜1兆9000億円にまで高めるとともに、半導体・電子材料の売り上げを45%(約8100億〜8550億円)まで引き上げる目標を掲げている。

 髙橋氏は会見で繰り返し「(事業の)ポートフォリオの見直し」を強調した。旧三菱銀行出身で、日本ゼネラル・エレクトリックなどを経て2015年に昭和電工に入社した同氏は、入社後に「優秀な技術者が大勢いるが、(事業の)ポートフォリオを見ると課題が山積している」と感じたという。「収益性が低く、安定性に欠けており、成長事業を持っていなかった」(髙橋氏)。

 2020年の日立化成の買収や、2021年にアルミ缶事業や食品包装用ラップフィルム事業など8事業から撤退したのは、そんなポートフォリオ見直しの具体化だ。半導体・電子材料を得意とする日立化成の買収によって、「世界一の(半導体の)後工程材料メーカーに変貌した」と髙橋氏は言う。

 半導体の製造プロセスは、回路を形成する「前工程」と、複数の半導体チップを積み重ねたりつないだりしてより性能を高める「後工程(パッケージ工程)」に大きく分けられる。髙橋氏は「前工程の微細化による半導体の性能向上は限界に達しているといわれており、後工程の技術革新が注目されている。その後工程で使われる材料(積層板材や感光性材、封止材など)のメーカーとしてレゾナックは他の材料メーカーを引き離して世界ナンバーワンのポジションにいる」と強調した。

半導体の後工程で用いられる材料メーカーの売上高比較
半導体の後工程で用いられる材料メーカーの売上高比較
(出所:レゾナック・ホールディングス)
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 エポキシやフィラーなどの分子設計を得意とする旧昭和電工と、封止材や感光性絶縁材など機能設計を強みとする旧日立化成の技術が補完し合うシナジー効果により、半導体の後工程材料の技術革新をけん引していく考えだ。