マツダは2023年1月27日、部分改良した小型車「マツダ2」の予約受付を開始した。同年3月下旬の発売を予定する。今回の部分改良では、塗装工程からの二酸化炭素(CO2)排出量削減などの環境対策に力を入れた。また、購入者の比率が下がっている若年層の開拓を狙い、新たなグレードを設定した(図1)。
同社は2035年に、世界の自社工場における炭素中立(カーボンニュートラル)を目指している。その取り組みの一環として、部分改良したマツダ2(以下、部分改良車)では、塗装工程からのCO2排出量を削減するため、屋根材に「ルーフフィルム」という新構造を採用した(図2)。
さらに、内外装部品に塗装が不要(塗装レス)のバイオ樹脂を使った。同樹脂は射出成形で部品を造るだけで、従来の塗装品を上回る高い質感を実現できる。植物由来の原料を使うために石油資源の使用量を減らせる。塗装が必要ないため、CO2排出量やVOC(揮発性有機化合物)発生量の削減にも寄与する。
塗装工程からのCO2排出量を半減
前者のルーフフィルムとは、屋根材の2色塗装の一部をPVC(ポリ塩化ビニル)樹脂製のフィルムに置き換えたもの。従来の方法では上塗り塗装を2回行っていたが、新たな方法では上塗り塗装を1回に減らし、2回目の上塗り塗装の代わりに同フィルムを貼り付ける。
その結果、クルマ1台当たりのCO2排出量を従来の60.6kgから30.3kgに減らせた。フィルムを貼り付ける際のCO2排出量(約0.3kg)を加えても、従来に比べてCO2排出量は約30kg減った。部分改良車の開発責任者であるマツダ商品本部主査の水口浩司氏は、「ルーフフィルムは“脱塗装”の第一歩になる。他の部位にも適用したい」と強調する。
ただ、上塗りした屋根材にフィルムを貼り付けた場合、光の正反射が強いと微小なひずみが目立つ。一方、光の拡散反射が強いと意匠性が低下する。
そこで、フィルム表面の形状を工夫して正反射と拡散反射の方向と強さを制御し、高い意匠性を実現した(図3)。同社技術本部車両技術部で塗装技術グループのアシスタントマネージャーを務める大川岩保氏は、「製造コストは従来と大きく変わらない」と明かす。