2023年1月26日に全国で運用が始まった「電子処方箋」。これまで紙に印刷されていた処方箋がデジタル化され、電子データとして扱えるようになった。電子処方箋の運用開始によって、処方薬の受け渡しや処方箋の情報管理などはどう変わるのか。「10の疑問」としてまとめた。
- Q1:そもそも「電子処方箋」とは?
- Q2:誰でも使える?
- Q3:どこの医療機関や薬局でも使える?
- Q4:薬の受け取り方はどう変わる?
- Q5:患者にとってのメリットとは?
- Q6:医療機関にとってのメリットとは?
- Q7:薬局にとってのメリットとは?
- Q8:紙の処方箋やお薬手帳はどうなる?
- Q9:インターネットでも薬が買えるようになる?
- Q10:外国ではどうなっている?
Q1:そもそも「電子処方箋」とは?
電子処方箋とは、従来は紙媒体を使っていた処方箋をデジタル化して、クラウド上に構築した「電子処方箋管理サービス」で管理する仕組みを指す。処方箋には、薬の種類や服用量などが記載されており、これまでは紙に印刷されたものを医師が患者に交付し、それを患者経由で渡された薬剤師が調剤に用いていた。電子処方箋では、処方箋のデジタルデータをクラウド経由で医療機関と薬局、患者が共有できるようになる。処方箋の紛失防止やペーパーレス化につながるほか、過去の薬歴を参照して重複投薬の確認がしやすくなるといった効果が期待されている。
電子処方箋管理サービスの基盤となっているのは、2023年4月以降に原則義務化される「オンライン資格確認等システム」だ。オンライン資格確認は加入している健康保険や自己負担限度額といった患者の資格情報を、マイナンバーカードのICチップや健康保険証の記号番号を用いてオンラインで確認できるようにする仕組みのこと。これを拡張し、処方箋の情報までを管理できるようにした。
Q2:誰でも使える?
電子処方箋は健康保険証を持つ患者なら誰でも利用できる。健康保険証とひも付けたマイナンバーカード(通称:マイナ保険証)も利用できるが、マイナ保険証を使うには事前の利用申し込みが必要だ。
健康保険証とマイナ保険証のどちらを使うかで受けられるサービスに差がある。マイナ保険証では、患者が同意すれば他の医療機関で処方された薬も含めて過去3年分の情報を医師や薬剤師と共有できる。健康保険証では電子処方箋管理サービスでの共有ができないため、お薬手帳や口頭で確認することになる。
電子処方箋の運用が始まった後でも、引き続き紙の処方箋を使うケースは残る。医療機関や薬局が電子処方箋に対応していない場合だ。加えて、患者は受診した医療機関で医師に処方箋を発行してもらう際に、電子処方箋にするか紙の処方箋にするかを選択できる。ただし紙の処方箋を希望した場合でも、電子処方箋に対応した医療機関であれば処方情報自体はマイナンバーとひも付けて記録されることになる。