日本生命保険は顧客向けWebサイトを運営するシステムを、オンプレミスから米IBMが提供するパブリッククラウドのIBM Cloud上に移行する。「2024年の早期に運用開始」(舘山豊IT統括部インフラ統括課長)を目指す。2021年の秋ごろデザインなどの開発に着手し2023年1月時点でテストフェーズに入っている。
クラウド移行の狙いの1つは中長期的なコストの削減だ。サーバーの調達にかかる直接のコストを約1割削減し、システム刷新にかかるエンジニアの工数まで考慮した総コストを削減できるとみている。
非互換をインフラで吸収
システムを円滑にクラウドへ移行するために最も注力している取り組みの1つが、アプリケーションの互換性を確保する作業だ。移行するシステムのアプリケーションはJavaで開発している。オンプレミス環境からクラウド環境にシステムを移行するには、JavaやIBMが提供するWebアプリケーションサーバー「WebSphere Application Server」などのバージョンアップが必要だった。ミドルウエアのバージョンが変わると、既存のオンプレミス環境で動かしているアプリケーションをそのまま動かせなくなる恐れがある。
移行対象のアプリケーションの互換性を検証したところ、「約2000件の非互換があることがわかった」(日本生命グループの情報システム企業、ニッセイ情報テクノロジーの山田啓人基盤ソリューション事業部チーフマネジャー)。アプリのソースコードを1つひとつ改修すれば手間とコストがかさむ。
そこで日本生命はオンプレミスで使っているJavaアプリケーションがクラウドでも機能するよう「オープンな器を使いつつ、中身は既存の構造をできるだけ保ったまま」(山田チーフマネジャー)移行する方策を採った。米レッドハットのオープンソースベースのコンテナ管理基盤「OpenShift」を使い、システムのモダナイゼーションにも取り組む。