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 日立製作所が約1兆円を投じて米IT企業のGlobalLogic(グローバルロジック)を買収して約1年半がたった。日立は買収のシナジー(相乗効果)を創出すべく、グローバルロジックを軸に、ITとOT(制御技術)、プロダクトを持つ日立の潜在力を引き出す取り組みを進めている。

 「今までの日立は話題づくりという点でおとなしすぎた。エンド・トゥ・エンドでサービスが提供できることをきちんと伝えていく取り組みが重要だ」。グローバルロジックのシャシャンク・サマント会長はこう話す。日立の連結売上収益(売上高に相当)は10兆円に達し、デジタル関連事業を束ねるデジタルシステム&サービス(DSS)部門だけでも2兆円を超える。

米GlobalLogic(グローバルロジック)のシャシャンク・サマント会長
米GlobalLogic(グローバルロジック)のシャシャンク・サマント会長
(写真:日経クロステック)
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 これだけの規模を誇るにもかかわらず、「日立のITサービスはグローバルでまだ十分に知られていない」(サマント会長)。「日本で成功しているDSSのビジネスを世界に展開できれば、世界のITサービスのプレーヤーでトップ5に入れる」と同氏はみる。

ルーマニアとウルグアイのIT企業を買収

 DSSのグローバル展開に向けては、グローバルロジックが中心的な役割を果たす。そこで同社は地盤の北米だけでなく、ITサービスのグローバル提供のために、同業のM&A(合併・買収)で体制強化を進めている。

 直近では、2022年11月にルーマニアのFortech(フォーテック)を、2023年1月にウルグアイのHexacta(ヘクサクタ)をそれぞれ買収すると発表している。フォーテックは2023年1月に買収を完了し、ヘクサクタは規制当局の承認を前提に2023年3月までに買収を完了する予定だ。

 グローバルロジック自身も2023年1月、スペインに複数の開発拠点を開設すると明らかにした。同国で今後3年間に最大2500~3000人の専門人材の雇用を見込む。

米GlobalLogic(グローバルロジック)による直近のM&A(合併・買収)などの動き
米GlobalLogic(グローバルロジック)による直近のM&A(合併・買収)などの動き
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 グローバルロジックのニテッシュ・バンガ社長兼CEO(最高経営責任者)は「次世代のタレント獲得が買収の1つの目的だ。DX(デジタルトランスフォーメーション)において最も重要な要素はデジタルエンジニアリングの人材をどれだけ持てるかである」と力を込める。M&Aについては「成長に、そして差別化要因として非常に重要な手段だ。適切な資産や能力を獲得するため、継続していきたい」とした。