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 アルミニウム合金切削加工のHILLTOP(京都府宇治市)は、機械学習を応用して加工プログラムの作成をほぼ自動化したシステム「COMlogiQ(コムロジック)」の概要を明らかにした。自社での利用に加え、外部へのサービス提供も開始した。AI(人工知能)開発・コンサルティングのLIGHTz(つくば市)と共同で開発した。

加工プログラムの作成能力が事業を左右

 HILLTOPはこれまでも、加工プログラム作成の所要時間を大幅に短縮するとともに、加工の熟練者でなくても扱える「HILLTOPシステム」を自社で開発し、実用化している。COMlogiQは、HILLTOPシステムをさらに進化させたもの。より広い範囲の作業を自動化し、人手をかけずに済むようにした(図1)。

図1 HILLTOPシステムとCOMlogiQでの業務プロセス
図1 HILLTOPシステムとCOMlogiQでの業務プロセス
COMlogiQでは自動化可能な範囲を拡大した。一部に機械学習を利用している。(出所:HILLTOPとLIGHTzの資料を基に日経クロステックが作成)
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 同社の事業は、1~数個と極めて少ない生産数のアルミ合金製品の加工(図2)。1件当たりの個数は少なくても、数多くの顧客から注文を受けて次々と加工をこなし、工作機械の稼働率を高めて安価な加工サービスを提供する。

図2 アルミ合金の切削加工品
図2 アルミ合金の切削加工品
COMlogiQを適用して製作したサンプル。(写真:日経クロステック)
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 アルミ合金材料を切削加工で製品にする作業は、工作機械に材料と加工プログラムをセットすれば、後は人が付いていなくても進行する。加工途中でワーク(被加工物)をセットし直す必要がないよう、工具をさまざまな角度に変えられる5軸加工機を活用する。実質的に作業者は材料の取り付けと完成品の取り出しをすればよく、ほぼ24時間工作機械を稼働させられる(図3)。

図3 HILLTOP本社の加工フロア
図3 HILLTOP本社の加工フロア
もっぱら5軸の加工機(マシニングセンター)を導入して、自動で加工が進むようにしている。(写真:日経クロステック)
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 この事業スタイルでカギを握るのが、加工プログラムを短時間で大量に作成できる能力。加工プログラムは、1本作成すれば同じ形状のものを何個でも削り出せる半面、1個しか削らない場合でも加工プログラムは1本必要になる。工作機械は自動で運転できても、加工プログラムの作成が遅れると加工を始められず、工作機械に待ちが生じて効率が落ちてしまう。

 増産を図るうえでも、加工プログラムの作成はネックになりかねない。工作機械を増やすのは容易だが、加工プロブラムを作成できる加工熟練者の増員は簡単ではない。つまり「加工プログラムの作成時間と、プログラム作成が可能な熟練者の人数によって受注件数が制約される」(HILLTOP企画開発推進部事業開発の吉田奨氏)ことになる。

 従って同社の事業では、加工プログラムを非熟練者が短時間で大量に作成できる能力が極めて重要になる。この加工プログラム作成工数を大きく減らし、かつ非熟練者でも担当可能にしたのがHILLTOPシステムだった。