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 ABILITYは展示会「第15回 オートモーティブワールド」(2023年1月25~27日、東京ビッグサイト)に、人の手で着脱可能な「水素カートリッジ」を利用する燃料電池車(FCV)をコンセプト展示した(図1)。FCV導入のハードルが低い「Easy and Convenience Achieve Concept(ECOA)」というコンセプトに基づくという。

図1 ECOAに基づく小型の燃料電池車(FCM)のコンセプト
車両自体はトヨタ自動車の車両。車両の荷物置き場を改造した(写真:日経クロステック)
図1 ECOAに基づく小型の燃料電池車(FCM)のコンセプト
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図1 ECOAに基づく小型の燃料電池車(FCM)のコンセプト
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 水素カートリッジは、水素を充填した容器(図2)。外形寸法は長さ450mm、直径100mm。今回はモックアップだが、“本物”の重量は1本で8kgになるとする。容器の中身は明かしていないが、「常圧で水素を出し入れする」(ABILITY)ということから、主に水素吸蔵合金だと考えられる。

図2 水素カートリッジは手で持てる
水素カートリッジ(左:装着時、右:取り出し時)の様子。寸法は直径100mm、長さ450mm(写真:日経クロステック)
図2 水素カートリッジは手で持てる
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図2 水素カートリッジは手で持てる
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重さは電池の約1/7と軽い

 出展した小型FCVの場合、航続距離は「この水素カートリッジ1本で100km」(ABILITY 取締役CTOの宍戸智彦氏)。仮に、これが電池だとすると電費を9km/kWhと高めに仮定しても、100km走るには約11.1kWhの電池が必要になる(図3)。現在の車載用電池パッケージの重量エネルギー密度は200Wh/kg弱なので、11.1kWh分の電池パックは55.6kgかそれ以上。これを一般の人1人が人力で着脱するのはほぼ不可能だが、水素カートリッジであればその約1/7以下の重さで済み、片手で持つこともできる。

図3 ABILITYの出展パネル
(写真:日経クロステック)
図3 ABILITYの出展パネル
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 電気自動車(EV)でも、電池モジュールを着脱可能にして1~数分で交換して利用できるようにしたサービスが中国などで勢いにのっている。水素カートリッジを使う場合もビジネスモデルは、電池交換式サービスとほぼ同じ。ただ、カートリッジの軽さは大きな強みになる。