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日産自動車と日立ビルシステム(東京・千代田)は共同で、日産の軽の電気自動車(EV)「サクラ」(電池容量20kWh)の電力を使って、日立の標準型エレベーター「アーバンエース HF」を10時間連続で稼働させる実証実験を実施し、稼働可能なことを実証した(図1、2 )。両社は、EVの電力で停電時のエレベーターを利用可能にする「V2X(Vehicle to everything)システム」の普及を目指している。この実証実験は、その“協創”のための取り組みの第1弾という位置付けだ。
図1 エレベーターに電力を供給する日産自動車の軽電気自動車(EV)「サクラ」
急速充電ポートを介して、エレベーターへの給電を可能にするシステムに接続されている。(写真:日経クロステック)
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図2 軽EVの電力で稼働させたエレベーター
日立ビルシステムの「アーバンエース HF」。9人乗りのもので、通常時は60m/分の速度で移動する。(写真:日経クロステック)
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V2Xシステムは、EV用の充放電器や、エレベーターとの連携用の入出力盤などから成る(図3 )。EVの急速充電ポート〔CHAdeMO(チャデモ)〕を介して、EVへの充電とEVからの放電を可能にする。通常時はEVの充放電設備として使え、停電時にはEVを電力供給源とする設備として使える(図4 )。EVから取り出した直流の電力をエレベーターや給排水ポンプ、業務用空調機などで使える200Vの三相交流に変換する機能も備える。
図3 EV用の充放電器とエレベーターとの連携用の入出力盤
右から順に、200V三相交流の充放電器(出力10kVA)、蓄電池、エレベーター連携用入出力盤、200V単相交流の充放電器(出力6kVA)。マンションなどビルに用いられるエレベーターや給排水ポンプ、業務用エアコンは200Vの三相交流だが、照明や家庭用エアコンなどは200Vの単相交流となっているため、2つの充放電器をそろえている。蓄電池は、太陽光発電などを利用するために使う。(写真:日経クロステック)
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図4 実証実験で用いたシステムの概要
停電時にはブレーカーを切り替え、系統電力から遮断したうえで、V2Xシステムを介してEVからの電力供給を可能にする。(写真:日立ビルシステムのプレゼン資料を日経クロステックが撮影)
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さらに、エレベーターの速度を落とす機能や、EVの電池残量が不足しそうなときにエレベーターを停止させる機能を持たせている。両社によれば、エレベーターとの連携用の入出力盤と、エレベーター側のプログラム改造によって、これらの機能を実現している。従って、こうしたプログラムの改造を受け付けない古いエレベーターには、同V2Xシステムは使えない。
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