2023年1月25~27日に東京ビッグサイトで開催された展示会「第15回オートモーティブワールド」では、2021~2022年に相次いだ、幼稚園や保育園の送迎バスでの幼児の置き去り事件の再発を防ぐためのシステム提案が複数の企業から提示された。
その1社が村田製作所である。同社は、2つの無線技術を幼児の置き去り防止技術として展示した。(1)無線LAN(Wi-Fi)を使う技術、(2)60GHz帯のミリ波レーダーを使う技術――の2種類だ。
(1)は、村田製作所が以前から提携する米Origin Wirelessの技術で、Wi-Fiのアクセスポイントから出た電波が車内の人や壁などで何度か反射されて戻ってくる際のわずかな変化を検知することで、人の有無や体の動きなどを検知する技術。寝ている幼児の呼吸のわずかな胸の動きなども検知できるとする。ブースでは、呼吸するように胸が動く赤ん坊の人形を実際に座席に寝かせて、毛布を被っていても呼吸を検知するデモを実演した(図1)。
ただし、利用には車両1台中に2台のWi-Fiのアクセスポイントが必要。設置位置は推奨はあるものの、基本的にはどこでもよいという。「最近はテレマティクスなどが進んで、Wi-Fiのアクセスポイントが2台実装されている車両が増えている」(村田製作所)。とはいうものの、そうした車両はまだ少ないのが事実。また、Wi-Fi利用では、人の車両内での位置の特定や、大人と子供の識別ができない課題もある。
一方、(2)の60GHz帯ミリ波レーダーは、Wi-Fiができることはほぼすべてできるうえに、人の位置の特定や大人と子供の識別もできる(図2)。「Wi-Fiがない場合は、ミリ波レーダーという選択になる」(村田製作所)。
ただし、Wi-Fiでは死角がほぼないのに対して、ミリ波レーダーは分厚い物体は透過せず、探知可能範囲がやや狭い。一般の乗用車であれば、車室内天井の1カ所にレーダーモジュール1台を設置すればよいが、送迎用のマイクロバスの場合は、複数台の設置が必要になるとする。加えて、Wi-Fi版では不要だったキャリブレーションが車種ごとに必要なことも課題といえる。
村田製作所はこのための60GHz帯ミリ波レーダー用モジュールを開発中で、2024年に量産出荷する計画だ(図3)。現時点で既に試作も済ませているが「顧客の要望に合わせた具体的な仕様を検討している」(同社)という。