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 ソニー生命保険は2022年10月、約5300人いる「ライフプランナー」(LP、営業担当者)が個人顧客との商談に使う営業支援システムを刷新。順次、全LPに展開している。システム基盤のインフラは米Microsoft(マイクロソフト)のクラウドサービス「Microsoft Azure」を採用。コンテナサービスを主体とし、比較的小さな機能を疎結合で連携するマイクロサービスアーキテクチャーに基づいて開発した。

顧客のライフプランを分析するシステム「GLiP」の画面。100歳過ぎまでの毎年の収入や必要な費用、補償額などをグラフでわかりやすく表示する
顧客のライフプランを分析するシステム「GLiP」の画面。100歳過ぎまでの毎年の収入や必要な費用、補償額などをグラフでわかりやすく表示する
(出所:ソニー生命保険)
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 「これまでは少しの機能改善をするにも手間がかかっていたが、より短期間で実現可能になった」。ソニー生命で営業システム開発部プロジェクト推進室の室長を務める嶋宏紀氏は、営業支援システムをモダナイズした効果をこう語る。

 新たに構築したのは、顧客のライフプランを分析するシステム「GLiP」だ。同社が約30年の営業活動などで蓄積した約386万件の契約者の動向に関するデータや、AI(人工知能)を活用し、希望するライフプランに応じて長期で必要な資金や補償額を分析する。

「人生100年時代」に合わせた備えを可視化

 顧客の年齢、家族構成、収入の見通し、資産運用、住宅や自動車の購入予定などを入力すると、100歳過ぎまでの毎年の収入や必要な費用、補償額などをグラフでわかりやすく表示する。死亡に加えて、がん・心臓病・脳血管疾患の3大疾病にかかった場合など、重要なリスクに対する資産や補償の充足率も示す。

 約386万件の契約者の動向に関するデータを基に、顧客の貯蓄傾向のほか住宅、旅行、教育などどんな分野への支出を重視するかをAIが解析し、27のパターンに分類。平均的な家計との比較や支出の改善点も示す。

約386万件の契約者の動向に関するデータを基に、顧客の貯蓄傾向に加えて住宅、旅行、教育などどんな分野への支出を重視するかをAIが解析し、27のパターンに分類する
約386万件の契約者の動向に関するデータを基に、顧客の貯蓄傾向に加えて住宅、旅行、教育などどんな分野への支出を重視するかをAIが解析し、27のパターンに分類する
(出所:ソニー生命保険)
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 GLiP構築の狙いは、長寿化が進む日本において「人生100年時代」の到来や、「老後2000万円問題」に合わせた備えや対策をわかりやすく提示することだ。嶋氏は「これまでLPが独自に提案していたノウハウを取り込み、ライフプランの改善点を自動的に可視化することで、より効率的かつ適切な提案を支援する」と説明する。

 ライフプランの試算には、同じソニーフィナンシャルグループ傘下のシステムとも連携する。例えば住宅ローンの金利であればソニー銀行、火災保険や自動車保険の見積もりならソニー損害保険のシステムを介して金額を表示する。

 不動産価格や株価・投信基準価額などは、外部サービスからAPI(アプリケーション・プログラミング・インターフェース)を介してGLiP側のコンテナ上のアプリへ取り込む。提案時点の相場に合わせたデータの活用により、試算の精度を高めている。

 顧客向けのスマートフォンアプリも用意した。収入や支出などの金額を入力することで、ライフプランの達成状況や改善点の把握に生かせる。アプリからLPに相談する機能もある。「ポップアップで定期的に契約内容の確認を促すなど、顧客との接点づくりにも役立つ」(嶋氏)。

顧客向けのスマートフォンアプリの画面。ライフプランの進捗確認や更新ができる。アプリからLPに相談する機能もある
顧客向けのスマートフォンアプリの画面。ライフプランの進捗確認や更新ができる。アプリからLPに相談する機能もある
(出所:ソニー生命保険)
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