全1895文字
PR

 ソフトロボット事業化に向け、「プレステの父」創業のロボットベンチャーと協業――。ブリヂストンとアセントロボティクスは2023年2月1日、資本業務提携を締結したと発表した。ブリヂストンのタイヤで培ったノウハウを生かしたロボットハンドに、アセントロボティクスのAI(人工知能)画像認識技術を組み合わせる。

 早ければ2024年度の事業化を目指す。「出資額は5億円。ブリヂストンがモビリティー分野以外の企業に出資するのは初めてだ」とブリヂストン ソフトロボティクス ベンチャーズ CEO(最高経営責任者) 兼 探索事業開発第1部門長の音山哲一氏は語る。なお、「ソフトロボティクス ベンチャーズ」はブリヂストンの社内ベンチャーとして2023年1月に立ち上げた企業である(図1)。

図1 資本業務提携を記念したイベントでの様子
[画像のクリックで拡大表示]
図1 資本業務提携を記念したイベントでの様子
写真左がアセントロボティクス 代表取締役兼CEO(最高経営責任者)の久夛良木健氏、右がブリヂストン ソフトロボティクス ベンチャーズ CEO 兼 探索事業開発第1部門長の音山哲一氏。音山氏が手に持つのが開発するロボットハンド(写真:日経クロステック)

 「未来は絶対これだと思っていた。なぜ製品が出てこないのか不思議だった」。アセントロボティクス 代表取締役兼CEOの久夛良木健氏は、ソフトロボットをこう評する。同氏はソニーグループでプレイステーションの開発を指揮した経歴を持つ。音山氏に「1年半前」(音山氏)に出会ってから、プロダクトデザインなどの面からアドバイスしてきた。「ソフトロボットはこれからの少量多品種の時代で需要があるだろう」(久夛良木氏)と自信を見せる。

 ソフトロボットとは、その名の通り柔らかいロボットのこと。従来のロボットと比べて柔軟な動きができたり、ヒトとぶつかっても傷つけにくかったりすることが特徴である。ヒトとロボットの共生時代に向けた技術として開発が進んでいる。

 ブリヂストンの開発品は、軟体生物の触手のような見た目をしており、形状の異なるさまざまな対象物をつかめる。ゴム材料が個体差を吸収するためだ。アクチュエーターやセンサーが高精度でなくても、対象物に合わせた適切な力加減でモノをつかめる注1)図2)。

注1)苦手とする対象物は「紙のようなもの。スマートフォン程度の厚みが限度」(ブリヂストンの担当者)という。
図2 開発するソフトロボットがモノをつかむ様子
[画像のクリックで拡大表示]
図2 開発するソフトロボットがモノをつかむ様子
デモンストレーションでは、対象物を運ぶ速度は計15~20秒程だった(写真:日経クロステック)

 開発品は空圧式で、日用品や生鮮食品などを扱う物流分野での用途を想定するため「2kgまでの対象物に対応した」(ブリヂストンの担当者)。同社は2月1日に開いた説明会で、日用品や食品が並ぶ棚からタマネギの袋や牛乳パックなどをつかみ、箱の中に積み重ねていくデモンストレーションを披露した(動画)。

動画 ソフトロボットが食品を運ぶ(音声あり)
(動画:日経クロステック)