Zホールディングス(ZHD)が組織から製品戦略までつくり直しに入る。2023年度中に中核会社のLINEおよびヤフーと合併し、社長も2023年4月に川邊健太郎氏から出澤剛氏に交代する。
主力事業のデジタル広告とEC(電子商取引)事業の伸び悩みが背景にある。市況の低迷に加え、スマートフォンになじみやすい動画広告が手薄で収益が悪化。ECについては日本一を目指すとしていた目標を取り下げた。川邊氏と出澤氏は3社合併により組織やサービスの重複を省き、意思決定のスピードを上げて巻き返しを図る。
3社合併という大胆な組織再編に踏み切った理由の1つを、川邊氏と出澤氏は意思決定の遅れだと説明する。両氏が共同でCEO(最高経営責任者)を務める現体制は「意思決定が二重化していた」(出澤氏)。ZHDに加え、中核会社のヤフーとLINEにもそれぞれ取締役会があり経営会議がある。「3社の意思決定が交錯し、組織としてのスピード感を高められないデメリットが、経営統合を経たこの2年で出てきた」。川邊氏は、ヤフーとLINEの相互理解を深めるうえでこの2年は有意義だったとしつつも、経営層の重複が組織全体の足かせになったと認める。現状の2トップ体制から、3社合併後は出澤氏が単独でCEOを務める体制に改める。経営層もスリムにして、意思決定のスピードを高めるとする。
重複するサービスの多さも3社合併を後押ししたとみられる。スマホ決済の「PayPay」と「LINE Pay」、EC、デジタル広告事業、マンガやゲームなどのコンテンツなど、ヤフーとLINE、さらにZHDグループ内でも同様のサービスを手掛ける。3社合併後は「重複した組織の機能やサービスの統廃合と併せて、いっそうのコストコントロールを実施する」(川邊氏)。
経営統合のシナジー(相乗効果)を発揮しきれず、成長が物足りなかったとの思いもあるようだ。出澤氏は3社合併で目指す効果としてトップライン(売上高)の拡大を挙げた。「(ヤフーとLINE)両社のサービスやデータをかけあわせて、マネタイズの効率を高めたり営業力を強化したりする」(同)。2021年3月の経営統合直後、LINEがアプリ利用者の個人データを海外拠点で扱っていた問題が発覚。グループ全体でデータ管理体制を見直した結果、ヤフーとLINEそれぞれの利用者IDを統合する作業は後回しになり、思うようなシナジーを発揮できなかった。現在、ID連携の時期については「2023年以降」と述べ、具体的な時期を明らかにしていない。