全国銀行資金決済ネットワーク(全銀ネット)が2027年の稼働を目指す次期「全国銀行データ通信システム(全銀システム)」の大枠が2023年2月8日までに分かった。動作プラットフォームは既存の富士通製メインフレームから脱却し、オープン基盤を採用する方針だ。合わせて既存のCOBOLプログラムをJavaなどで書き換えることを検討している。全銀システムのオープン化は、国内金融機関の基幹系システムに対する判断に大きな影響を与えそうだ。
銀行間送金を担う全銀システムは1973年の稼働で、現在は第7世代が稼働している。およそ8年ごとにシステムを刷新しており、第8世代に当たる次期全銀システムは2027年の稼働を見込んでいる。
全銀ネットは次期全銀システムの構築に向けて、2022年4月に銀行や金融庁、ITベンダー、有識者などで構成する「次世代資金決済システム検討ワーキンググループ(WG)」を設置し、方向性などを議論している。WGは2022年度中に次期全銀システムの基本方針を取りまとめる予定だ。全銀ネットはその基本方針に沿って、2023年度にRFP(提案依頼書)を出し、担当ベンダーを選定したうえで、開発に着手する計画である。
中継コンピュータ(RC)は廃止へ
現状、全銀システムは平日朝から夕方までの取引を「コアタイムシステム」、平日夜間や土日祝日の取引を「モアタイムシステム」がそれぞれ処理する仕組みを採用している。取引参加者への影響を踏まえて、次期全銀システムでもこの構成は変えない。
次期全銀システムの動作プラットフォームは、富士通がメインフレームの製造・販売や既存顧客向けの保守から撤退する方針を表明したこともあり、オープン基盤を採用する考えだ。オープン基盤の構築に当たっては、特定のITベンダーに依存しないようにする。
アプリケーションは、内国為替など主要業務を担う「ミッションクリティカルエリア」と、主要業務の付加機能・サービスという位置付けの「アジャイルエリア」に分ける方針だ。領域を分けて独立性を高めることにより、アジャイルエリア側で新機能・サービスを素早く実装できるようにする。アジャイルエリアの動作プラットフォームはクラウドを含めて検討する。利用頻度が低い機能やサービスは統廃合も進める。
現時点で、銀行などが全銀システムに直接接続するには、独自の接続仕様に基づく「中継コンピュータ(RC)」を設置する必要があり、コストと手間がかかる。こうした状況を改善するため、全銀ネットはAPI(アプリケーション・プログラミング・インターフェース)ゲートウエイの構築を進めており、2025~2026年の稼働を見込んでいる。次期全銀システムが稼働する見込みの2027年時点では、RCとAPIゲートウエイが併存する形になる。将来的にはAPIゲートウエイへの一本化を目指しており、RCの廃止は2035年になりそうだ。