米国中部の電力事業者大手であるXcel Energyと、鉄(Fe)空気2次電池のメーカーである米Form Energyは2023年1月26日、Xcel EnergyがFe空気2次電池をエネルギー容量にして2GWh分、“発電システム”の一部として導入することで合意したと発表した(図1)。Fe空気2次電池は、負極にFe、正極に空気(酸素)を用いて、放電時にFeを酸化、充電時に酸化鉄、つまり鉄さびをFeに還元するというものである。
Xcel Energyは、2050年までの電力の100%カーボンフリー化を宣言している。それに向けた取り組みとして、米国でも最大級の石炭火力発電システムを2030年末までに停止させる計画だ。そしてその代わりに、再生可能エネルギーの大量導入を進めている。その出力安定化を低コストで実現する手段としてForm Energyの電池を採用したとする。Form Energyにとっても、これまでで最大規模の出荷例になる。
より具体的には、Xcel Energyは、同社が運営する米国最大級の石炭火力発電所2カ所に、Form EnergyのFe空気2次電池をそれぞれ1GWhずつ導入する。
1カ所は、ミネソタ州ミネアポリス市の北西約70kmにあるシェルコ(Sherco)発電所。もう1カ所は、コロラド州デンバー市の南約200kmのプエブロ(Pueblo)にあるコマンチ(Comanche)発電所である(図2)。共に、火力発電所としての役割は2030年末までに終える計画だ。
Fe空気2次電池の稼働開始は2025年初頭を見込んでいるが、実際には規制当局の許可が下りる時期に左右されるとしている。
10GW超の風力発電を導入済み
Xcel Energyは米国中部の風況の良さを背景に、風力発電システムをこれまで10GW超導入している。さらに、太陽光発電システムの導入も進めており、上述のプエブロのコマンチ発電所には、120MW規模の大規模太陽光発電所が併設されている。シェルコ発電所の近くにも460MW規模の太陽光発電所を建設する計画で、当局の許可待ちだ。2GWh分の蓄電システムを導入したのも、これらの再生可能エネルギーの出力安定化のためだとする。