米Amazon.com(アマゾン・ドット・コム)初の家庭用ロボット「Astro(アストロ)」の実力はいかなるものか。利用者の声も聞きながら、その正体に迫った。見えてきたのは、警備や見守りの機能を突破口に、家族の一員として浸透させようという同社の意図だ。
アマゾンがAstroを発表したのは2021年9月である。その後、招待制で米国内の限られたユーザーに販売を始めた。価格は約1500米ドル(約20万円)に設定しているものの、現在は早期割引価格の約1000米ドル(約13万円)で販売している。招待枠へのリクエスト件数は既に数十万件に達しており、家庭用ロボット業界で注目の的だ。
Astroは、周囲環境の認識や障害物の検知などに向けてさまざまなセンサーを搭載する。各部屋の地図を自動で作成し、周囲の様子を認識しつつ、障害物や人を避けながら自律的に移動できる。音声対話機能「Alexa(アレクサ)」に対応するので音声で指示を出せる。まさに「動くスマートスピーカー」だ。スマートフォン(スマホ)向けの専用アプリを通じた操作も可能である。
キャニスター式の掃除機のような大きな車輪を備えており、移動も静か。車輪と本体の間に隙間はほとんどなく、指を挟みにくい構造になっている。
実際にAstroを家庭で利用しているエレクトロニクス技術者は、こうしたAstroの「足回り」を高く評価する。「移動は早く、どこに行けばいいのかとまごつかないし、駆動音も静か。障害物を大回りせずにさっと避けるし、予測しにくい動きをする幼児にもぶつからない。地図も正確で、ナビ機能も信頼できる」(同技術者)。
留守宅を警備、ペットも見守り
そんなハードウエア性能を備えたAstroの主要な用途が、遠隔からの監視や見守りだ。外出先から留守宅を監視したり、高齢の親の様子を探ったりできる。専用アプリを使えば、離れた場所から部屋の様子をリアルタイムで確認できる。米国では、ホームセキュリティー用の機器が浸透しており、そこを突破口にAstroの普及を狙う。
アマゾンが本格的にホームセキュリティー分野に参入したのは、スマートドアホンなどを手掛ける米Ring(リング)を2018年に買収したことがきっかけだ。Astroはリングの機器やサービスとの連携が可能である。