意志が見えたのは、会見が始まってから1時間が過ぎた頃だった。
「50%以上の過半数は絶対に維持する。我々の将来が懸かっているのだから」。フランスRenault(ルノー)グループCEO(最高経営責任者)のLuca de Meo(ルカ・デメオ)氏はこう言い切った。
「2つの会社を1つにしようと」
ルノーと日産自動車が、ゆがみのあった出資比率の見直しで合意した。ルノーが保有する日産株の比率を15%まで引き下げ対等出資とする。この合意を受け、三菱自動車を加えた日仏3社連合(アライアンス)は2023年2月6日、英国ロンドンで共同会見を開いた。
日産社長兼CEOの内田誠氏は「対等なパートナーシップは変革を可能にするもの。相互信頼を深め、各メンバーがその強みを生かすことが重要だ」と新たな船出を宣言した。三菱自社長兼CEOの加藤隆雄氏は、「新しい方向性を非常に前向きに捉えている。アライアンスは、各社の得意分野や得意地域でより発展するための機会だ」と受け止めた。
デメオ氏はルノーと日産の関係性について、「2つの会社を1つにしようと思っていた」と明かす。だが、「それでは意味がない。それぞれの会社がそれぞれ最適に機能した方がいいと判断した」(同氏)として、ルノーグループが日産への出資比率を現在の約43%から15%に引き下げるという結論に至った。
これまでの提携関係についてデメオ氏は、「譲歩の文化になっていた。黄色と赤の主張の中でオレンジになってしまった」と振り返った。今後は、「赤いものがつくりたければ赤いものにしたい。健全に交渉できるようにしたい」と述べた。
アンペアの主導権はルノー
対等な関係――。共同会見で3社のトップが繰り返し強調するなかで、温度差を感じさせたのはAmpere(アンペア)に話題が及んだときだった。アンペアは、電気自動車(EV)とソフトウエアに関するルノーの新会社である。デメオ氏は「アンペアは特に欧州で、日産自や三菱自にも資するものになる」とメリットを強調した。
ルノー側の呼びかけに応じる形で、日産と三菱自は新会社に参画する方針だ。日産は最大で15%を出資する意向である。三菱自の加藤氏は「欧州の厳しい排ガス規制を背景に、EVを投入せざるを得ない。アンペアからのOEM(相手先ブランドによる生産)は、我々にとって魅力的なソリューションの1つになる」と評価した。
そして話は冒頭の発言に戻る。デメオ氏は、アンペアの主導権をはっきりと主張した。出資比率が最大で15%にとどまる日産が対等な関係を構築できるかは不透明だ。