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 「まだまだDX(デジタルトランスフォーメーション)推進の道のりは長そうだ」。日本情報システム・ユーザー協会(JUAS)は2023年1月から順次、速報値として結果を発表している「企業IT動向調査2023」を踏まえてこう指摘する。

 同調査は、JUASが企業のIT投資やIT戦略などに関する最新の動向を調べたものだ。調査は2022年9月9日~10月27日に実施。東証上場企業とそれに準じる企業4500社のIT部門長に調査を依頼し、Webアンケートで1025社から回答を得た。

 冒頭の指摘は、同調査の質問項目のうち「DX推進ができていると思うか」への回答結果を踏まえたものだ。この質問について「非常にそう思う」「そう思う」と答えた企業は合わせて全体の24.7%だった。2021年度に実施した前回調査に比べて増えてはいるものの、1.9ポイント増にとどまった。

「企業IT動向調査2023」のうち「DX推進ができていると思うか」との質問に対する回答割合を示したグラフ(速報値)
「企業IT動向調査2023」のうち「DX推進ができていると思うか」との質問に対する回答割合を示したグラフ(速報値)
(出所:日本情報システム・ユーザー協会)
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DX推進ができている企業に3つの特徴

 では企業が長いDX推進の道のりを乗り越える工夫はないのだろうか。この調査では社内におけるIT・デジタル関連の取り組み状況などについても尋ねている。調査担当であるJUASの山畔秀雄事業部シニアマネージャーは、調査結果のクロス集計などにより、DXを推進できている企業に3つの特徴を見いだした。

 具体的には、(1)CIO(最高情報責任者)やCDO(最高デジタル責任者)を設置している、(2)IT戦略を経営戦略に強く組み入れている、(3)IT部門が事業部門や経営層と連携している、である。

 今回の調査では、これら3つの特徴が把握できたり垣間見えたりしている。山畔シニアマネージャーは調査で、(1)に関連して「役職として定義されたCIO等がいる(専任)」「CDOを設置済み」、(2)に関連して「経営戦略を実現するためにIT戦略は無くてはならない」、(3)に関連して「経営者直轄の独立した組織が定義されている」「IT部門内にDX推進チームを組成している」、といった回答をした企業の内訳をそれぞれ調べた。

 するといずれも「DXを推進できていると思う」と回答した企業のほうが「DXを推進できているとは思わない」と回答した企業よりも、取り組んでいる割合が高かった。とりわけ「経営者直轄の独立組織」や「IT部門内のDX推進チーム」に関する結果はそれぞれ、DX推進企業のほうがそうでない企業より40ポイント以上高くなった。最も差の小さい「CIO等」についての結果も18.5ポイント差となった。

「企業IT動向調査2023」のうちIT・DX施策に関する結果の一部(速報値、単位は%)
(出所:日本情報システム・ユーザー協会の資料を基に日経クロステックが作成)
「DXを推進できていると思う」と回答した企業「DXを推進できているとは思わない」と回答した企業
「役職として定義されたCIO等がいる(専任)」と回答した企業(n=54)46.327.8
「CDOを設置済み」と回答した企業(n=102)54.917.7
「経営戦略を実現するためにIT戦略は無くてはならない」と回答した企業(n=262)45.122.2
「経営者直轄の独立した組織が定義されている」と回答した企業(n=146)53.412.4
「IT部門内にDX推進チームを組成している」と回答した企業(n=136)59.616.9

 以上を踏まえると、こうした施策を講じている企業が、DXを推進できている状況になる割合が高まりやすいと言える。これらの施策はいずれも、DX推進中の企業にとって当たり前なのかもしれない。しかし、企業がDXを進めていくには、こうした施策の徹底が必要だと言えそうだ。