全1748文字
PR

 3度目の上方修正、業績は過去最高へ──。ダイキン工業が2023年3月期(2022年度)の業績を上方修正した。空調事業で競合する三菱電機と比較すると売上高は約3倍、営業利益は約5倍となる(図1)。同社の空調(空調・家電)事業も成長しているものの、ダイキン工業の伸びにはかなわない。

図1 ダイキン工業と三菱電機(空調・家電事業と全事業)の業績の比較
図1 ダイキン工業と三菱電機(空調・家電事業と全事業)の業績の比較
2022年度通期の売上高および営業利益の予想を比べた。空調事業に関しては両社とも上方修正しているものの、その上昇幅はダイキン工業のほうが大きい。空調事業における両社の差は売り上げの規模で約3倍、営業利益の規模で約5倍。ダイキン工業の営業利益の予想は三菱電機全体のそれをも上回っている。(出所:日経クロステック)
[画像のクリックで拡大表示]

 ダイキン工業は2022年度通期の売上高を3兆9100億円(従来予想+1500億円)、営業利益を3720億円(同+90億円)と見込む。これに対し、三菱電機は空調・家電事業における2022年度通期の売上高を1兆3500億円(同+300億円)、営業利益を720億円(同+50億円)と予想した。ダイキン工業の営業利益予想は、いわゆるコングロマリット(複合企業)である三菱電機全体のそれ(2700億円)をも上回る。

稼ぐ力=特徴×重点テーマ×規模

 ダイキン工業の特徴は、需要のある所で生産する“地産地消”をベースとした「市場最寄り化」戦略と、代理店を介さない直販体制を基に、世界8極でサプライチェーン(供給網)を構築している点にある。この特徴の上に、2022年度に重点テーマとして掲げた戦略的売価政策や販売力強化、変動費のコストダウンの極大化、2023年度以降まで見据えた調達・供給力の強化など8つの施策を実行した。

 ここに、規模の大きさが生む量産効果による製造コストや調達コストの優位性が加わって構成されているのが、今のダイキン工業の「稼ぐ力」だ。すなわち、同社独自の強みと強化策、規模のメリットが稼ぐ力となって業績を押し上げ、三菱電機の空調事業(空調・家電事業)との差をさらに広げている。

 2022年度第3四半期(4~12月)の営業利益の増減要因を見ると、ダイキン工業も原材料費・物流費の高騰(-1270億円)と固定費などの増加(-560億円)、上海ロックダウン(都市封鎖、-180億円)に苦しんだ(図2)。だが、売価政策(値上げ、+1330億円)を実施する一方でコスト削減(+345億円)で踏ん張り、拡販(+508億円)に成功。ここに円安による為替効果(+270)が加わって、営業利益を3038億円(+443億円)に伸ばした。

図2 営業利益の増減要因
図2 営業利益の増減要因
ダイキン工業の2022年度第3四半期(4~12月)を見た。売価(値上げ)と拡販、コスト削減の施策の上に、為替(円安)の追い風を受けて増益を実現した。為替効果を除いた「実力値」(同社)でも営業利益は7%増加している。(出所:ダイキン工業)
[画像のクリックで拡大表示]