ホンダは、2022年7月に発売した「シビック」や2023年4月に発売予定の「ZR-V」のハイブリッド車(HEV)に同社のシリーズ・パラレルハイブリッド機構「e:HEV」の新型を搭載する。各国の環境規制に対応しつつ、走りの楽しさを重視したのが新型e:HEVの特徴だ。両車の開発陣は「特にターゲットとしたのが欧州市場だ」と口をそろえる。
「欧州の環境規制でe:HEVが必要」
自動車メーカーがHEVの開発を進める背景には、各国の厳しい環境規制が背景にある。例えば、欧州連合(EU)の執行機関である欧州委員会(EC)は、2030年に新車の二酸化炭素(CO2)排出量を、2021年比で55%削減する規制を発表している。中国は2035年をめどに、新車販売の全てを環境対応車とする方針だ。環境対応車のうち50%をHEVと定めている。
メーカーの販売する車種全体の平均燃費が基準値を下回らないように義務づける企業平均燃費(CAFE)規制も厳しさを増している。米国の運輸省が2022年4月に発表したCAFE規制の新基準では、2026年に、メーカーが販売する乗用車や小型トラックなどの平均燃費を2021年比で約3割改善する必要があるとしている。
このようなCO2/燃費規制を背景に、各自動車メーカーは、電気自動車(EV)やHEVなどの電動車を売らざるを得ない状況となっている。実際にHEVは販売台数が伸びている。欧州自動車工業会(ACEA)によると2021年、欧州主要国におけるHEVの登録台数は2020年比で60.5%増加した。HEVの販売台数(190万1239台)がディーゼル車(190万1191台)を上回るのは初めてだという。
ホンダも例外ではない。米国では、HEVのラインアップを増やすとともに、2023年中に多目的スポーツ車(SUV)タイプの新型EVの先行販売を予定している。欧州市場で販売する車種は、シビックの高性能版「シビックタイプR」を除いて全て電動車となった。
そんな中、ホンダは新型e:HEVを開発した。e:HEVは基本的に街乗りなどの低・中速領域では、シリーズ方式と同様にエンジンで発電し、その電力を使いモーターのみで駆動する。高速域では、エンジンとモーターの両方で駆動するシステムである。
新型e:HEVがターゲットとしたのが燃費規制の厳しい欧州市場だ。「欧州の燃費規制達成のためにはe:HEVが必要だった」と同社開発戦略統括部開発企画部開発企画二課チーフエンジニアの齋藤吉晴氏は話す。世界中の顧客に受け入れられるという意味でも「性能評価に厳しいとされる欧州の交通環境で基本性能を鍛えた」(同氏)という。