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 「イチゴの植物工場ではミツバチに受粉を任せているケースがある。しかしハチは自然界であれば1~2カ月ほど活動するにもかかわらず、植物工場だと1~2週間になる。現場の方々から非常に短命になると聞いている」。そう話すのは、HarvestX(東京・文京)の市川友貴社長だ。HarvestXは授粉ロボットなどの開発を手掛けており、ロボットとその運用を支援する制御基盤などを含めたサービス「HarvestX」を2023年夏から開始、イチゴの自動栽培を目指す。

HarvestXが開発するロボットの実験
HarvestXが開発するロボットの実験
(出所:HarvestXの動画からキャプチャー)
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 植物工場の利用・運用は広がってきている。「サラダやカット野菜向けに葉物野菜を生産している。先進的な例であれば、食品工場と植物工場を併設し、安定的にサンドイッチなどの商品を供給している」(市川社長)。同様に植物工場のイチゴも、安定的な生産を強みに市場規模が着実に大きくなっている。

 ただイチゴの植物工場には課題も存在する。葉物野菜と異なり、イチゴは受粉を必要とする。冒頭で述べたように、植物工場で受粉するハチは短命だ。その理由としては、栄養価が低いイチゴの蜜だけしかハチが得られないことや、太陽光が差し込まない閉鎖環境などが挙げられるという。植物工場はハチにとって「ブラック職場」なのだ。

 しかも植物工場の運営者がハチの死骸を適切に処理できなければ、工場内にカビなどが発生し、イチゴが病気にかかる可能性が出てくる。イチゴに病気がまん延すれば、安定的な供給に悪影響を及ぼす。また植物工場で過ごすハチはハチにとって環境が悪いため攻撃的であり、「作業者が工場内にいると、針を刺しに来るケースが多い 」(市川社長)。

 そこでHarvestXは授粉での課題解決を目指し、作業ロボット「XV3」を開発する。すでに同社はサービス開始に向けた準備を進めており、冒頭のHarvestXのサービス開始に向けて2023年2月現在、授粉精度向上・収穫の自動化などを狙い、東京大学内の施設、企業の植物工場などで実験を繰り返している。

イチゴの花に授粉している
イチゴの花に授粉している
(出所:HarvestXの動画からキャプチャー)
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