SUBARU(スバル)の新型SUV(多目的スポーツ車)「クロストレック」は、上位モデルで使用している多くの新技術を採用して、衝突安全性能を強化した。ボディー骨格を改良することで、衝突時の衝撃から自車の乗員を守ることに加えて、衝突した相手車両への加害性も減らした。
スバルは2030年に、スバル車が関与する交通死亡事故数をゼロにすることを目指している。電動化などによってクルマは重くなり、衝突時のエネルギーは増える方向にある。
交通死亡事故のうち多くは、先進運転支援システム(ADAS)の「アイサイト」で対応できると同社は考えているが、「衝突安全性能の強化で担保しなければならないケースは今後も必要」と、スバル車両安全開発部衝突安全第二課の和田芳雄氏は話す。
新型クロストレック(以下、新型車)は、先代車の「XV」(以下、先代車)と同様に、スバルの最新プラットフォーム(PF)「Subaru Global Platform(SGP)」を適用するが、先代車のPFを改良して全方位(前面・側面・後面)の衝突安全に対応した(図1)。
バンパービームの形状を工夫
前面衝突への対応については、ボディー骨格を「クラッシュゾーン」と「キャビンゾーン」に分けて、衝撃荷重を効率的に吸収させる。具体的には、車両前部の骨格に「フロントサブフレーム」を追加して、クラッシュゾーンをマルチロードパス化(衝突荷重の伝達経路を増やすこと)した(図2、3)。
さらに、フロントバンパービーム(補強材)を車両の外側に伸ばして、衝突時の相手車両への加害性(コンパチビリティー)を低減させた。また、衝突時に水平対向エンジンを乗員室の床下に滑り込ませるようにした。
ただ、バンパービームを直線的に外側に延長しただけでは、コンパチビリティーを低減できない。そこで、バンパービームを外側に延長させる際に、歩行者保護のための衝突エネルギーを吸収するスペースとバンパーデザインの自由度を確保するための工夫を施した。具体的には、「バンパービームを外側かつ後方に延長することで、歩行者保護と前面衝突、デザインを成立させた」と、同社ボディ設計部ボディ設計第四課の西村尚記氏は説明する。
フロントフレームとバンパービームの接合部を「クラッシュボックス構造」にしたことも前面衝突に対する安全性能の強化に寄与した。この接合部を軸圧縮して潰すことで、衝突エネルギーを効率的に吸収する。先代車は、衝突時に潰さない「ステイ構造」だった(図4)。