ルネサス エレクトロニクスは、2022年12月期通期(1~12月)および第4四半期(10~12月)の連結決算の説明会を2023年2月9日にオンラインで開催した 関連資料ページ 。2022年通期の連結売上収益(売上高)は1兆5027億円(non-GAAP)であり、前年比51.1%増と大きく伸びた(図1、図2)。この売上高は過去最高である。連結営業利益は前年比88.6%増の5594億円(Non-GAAP)とこちらも大きく伸びた。
好調な業績を背景に、同社代表取締役社長 兼 CEO柴田 英利氏は次のような喜びのコメントをした。「昨年(2022年)は多くの業界関係者から、ルネサスがグローバル市場に戻ってきた、というコメントをもらった。今回、それを決算数字として示せて、非常にうれしい」(同氏)。同氏が2013年にルネサス入りしてから進めてきたグローバル化が結実したと言える。
ルネサスの前身(日立製作所、三菱電機、NECの各半導体部門)を含めて、以前の日本の半導体メーカーは純粋な国内メーカーだった。一方、2013年以降にルネサスは、米Intersil(インターシル)、米IDT(Integrated Device Technology)、英Dialog Semiconductor(ダイアログセミコンダクター)などを買収し、様々な面でのグローバル化を進めた*1。例えば、開発体制。以前の日本の半導体メーカーも海外にオフィスを構えていたが、市場調査と販売が目的で、開発は基本的に国内で行っていた。一方、ルネサスでは日本の本社だけでなく、買収した海外企業でも従来通りに開発を進めている。実際、半導体のオリンピックと称される国際学会「International Solid-State Circuits Conference」の第70回大会(ISSCC 2023、2月19~23日に米国サンフランシスコで開催)において、ルネサスの日本本社と、スイス現地法人がそれぞれ新技術を発表する。今後は、日本本社の技術と買収した外国企業の技術を組み合わせて新技術を開発するという*2。
経営体制も従来の日本スタイルとは異なる。従来は、買収した企業に日本人が乗り込んで経営トップに就くことがよくあった。ルネサスの場合は、外国現地法人は基本的に従来通りに運営されている。それどころか、2つの事業本部のうち1つ、IoT・インフラ事業本部では、トップ(事業本部長)はIDT出身者のSailesh Chittipeddi氏が務めている(図3)。同氏直下の2人のユニット長はIntersil出身者である。また、もう1つ事業本部である、オートモーティブソリューション事業本部ではルネサス生え抜きの片岡 健氏とDialog出身のVivek Bhan氏の2人が共同本部長を務めている。
ルネサスの2022年の売上収益のうち、国内分は約25%、海外分は約75%である。2021年に比べて海外比率はさらに上がっている。また、全社従業員のうち日本に勤務している比率は44%にとどまる(2021年)。2019年は57%だったので、従業員の配置でもグローバル化は確実に進んでいることがうかがえる。以上のように、開発体制、経営体制、売上比率、従業員分布など、グローバル半導体メーカーでは当たり前の状況が、国内半導体メーカーとしては恐らく初めてルネサスで整った。