リコーの大山晃取締役コーポレート専務執行役員が2023年4月1日付で社長執行役員・CEO(最高経営責任者)に昇格する。大山氏自身、一度は取締役ではなくなり、社長レースから外れたという見方もあったが、山下良則社長からの信頼は揺るがなかった。社内で「最高のナンバー2」と称される大山氏は、複合機依存のビジネスモデルから脱却を果たせるか。
「利他の心を持つ仕事人」。リコーの山下氏は2023年1月30日に開いた社長交代会見で、次期社長の大山氏をこう評した。「国内だけでなく、海外の現地マネジメントからの信頼も厚く、人間味があふれる一面も持っている」(山下氏)。指名委員会もグローバルでの経験・実績や実務能力などを評価し、大山氏を次期社長・CEOに推した。
「彼は信頼できると思った」
大山氏はキャリアの半分以上を海外で過ごした。主に販売部門を歩み、PMI(ポスト・マージャー・インテグレーション)と呼ばれる買収企業の統合作業で頭角を現した。2017年以降はCFO(最高財務責任者)やCMO(最高マーケティング責任者)などの要職を歴任。直近はコーポレート専務執行役員として、リコーの屋台骨を支える「リコーデジタルサービスビジネスユニット(BU)」を統括している。
山下氏と大山氏の接点は1996年に遡る。山下氏は英国工場、大山氏は買収先にリコーから赴任した幹部として、カートリッジなどリサイクル製品の事業展開を検討していた。当時から欧州は環境意識が高かったため、山下氏は生産の立場で事業化を積極的に推進していたが、手間がかかる割にコスト削減効果が限定的だったため、営業は必ずしも前向きではなかった。
そんなとき、大山氏は利害が対立しがちな生産と営業という部門の垣根を越えて、「コスト削減だけではない。官公庁などリサイクル製品を求めている顧客もいる」と発言したという。山下氏は「営業の人からその言葉を聞くのは初めてだったので、彼は信頼できると思った」と振り返る。