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 「DX(デジタルトランスフォーメーション)に取り組んでいる日本企業は確実に増加しているが、米国企業との差はまだ大きい」。IPA(情報処理推進機構)の古明地正俊社会基盤センターイノベーション推進部部長は、日米企業におけるDXの最新動向などをまとめた「DX白書2023」の内容を踏まえてこう指摘する。

 DX白書2023はIPAが2023年2月9日に公開した。2022年6~7月に実施したアンケート調査で、日本企業543社、米国企業386社から得た回答結果も盛り込んでいる。回答結果は2021年度に公開した「DX白書2021」の調査結果とも比べている。

デジタル化は少し進むも本質的変革は進まず

 今回公表した2022年度の調査で、DXに取り組んでいると回答した日本企業の割合は合わせて69.3%。前年度比13.5ポイント増だった。しかし、このうち「全社戦略に基づき」DXに取り組んでいると回答した割合の合計は米国企業に比べて13.9ポイント低い54.2%だった。さらに、DXに取り組み「成果が出ている」と回答した日本企業の割合は、米国企業に比べて31.0ポイント低い58.0%だった。

「DX白書2023」に掲載されているDXの取り組み状況に関する調査結果のグラフ
「DX白書2023」に掲載されているDXの取り組み状況に関する調査結果のグラフ
(出所:情報処理推進機構)
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 DX白書2023の調査では、DXの取り組み内容として「アナログ・物理データのデジタル化」「業務の効率化による生産性の向上」といったデジタイゼーション/デジタライゼーション関連の施策と、「新規製品・サービスの創出」「顧客起点の価値創出によるビジネスモデルの根本的な変革」といったデジタルトランスフォーメーション(変革)と呼べる施策の状況を尋ねている。古明地部長は日本企業について「デジタル化は少し進んできてはいるものの、本質的な変革は進んでいない」と指摘する。

「DX白書2023」に掲載されているDXの取り組み内容と成果に関する調査結果のグラフ
「DX白書2023」に掲載されているDXの取り組み内容と成果に関する調査結果のグラフ
(出所:情報処理推進機構)
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 このうち、デジタライゼーションに当たる「業務の効率化による生産性の向上」で成果が出ていると回答した日本企業は合計で78.4%、米国企業は79.1%とほぼ同じ割合だった。一方、デジタルトランスフォーメーションに当たる「顧客起点の価値創出によるビジネスモデルの根本的な変革」で成果が出ている日本企業は、米国企業に比べて49.8ポイントも低い21.5%。「『変革』では成果の獲得が進んでいない」(古明地部長)。

 こうした日米の差が生まれる背景は何か。DX白書2023の他の調査結果をみると、日本企業が、DXの全社推進に関する施策や、DXの担い手である人材の確保で、米国企業に後れを取っている現実が浮き彫りになっている。これらがDXの成果における日米の差につながっていると言えそうだ。以下、具体的に解説していく。