SOMPOホールディングス(HD)が、米Microsoft(マイクロソフト)の仮想デスクトップSaaS(ソフトウエア・アズ・ア・サービス)である「Windows 365」を導入した。介護事業における入居者データ分析のセキュリティー強化が目的だ。OS更新や負荷分散なども含めた運用をマイクロソフトが担当する点などを評価した。
2023年度から本格的に事業を開始する「介護RDP(リアル・データ・プラットフォーム)」の開発環境に、Windows 365の仮想デスクトップを使用する。Windows 365の導入作業は2022年4月に開始した。
介護RDPは、SOMPOHD傘下の介護大手であるSOMPOケアが運営する介護施設において収集した入所者の介護データを分析し、最適な介護につなげるデータ分析基盤である。介護RDPを開発するSOMPOHDのデジタル・データ戦略部や外部の協力会社が使用する開発環境「セキュア開発環境端末」にWindows 365を採用した。
介護RDPで扱うデータは、介護施設で計測する入所者の血圧や体重などのバイタルデータや、介護の内容を記録したケアデータなどだ。これらのデータをSOMPOHDが2019年から提携する米Palantir Technologies(パランティア・テクノロジーズ)のビッグデータ分析システム「Palantir Foundry(パランティア・ファウンドリー)」で解析し、介護施設の運用を効率化したり、個人に最適化した介護サービスを提供したりする。介護RDPはSOMPOケア自身が活用するほか、2023年度からは介護事業者向けのデジタルサービス「egaku」として外販も始める計画だ。
介護RDPが採用するPalantir Foundryには、要配慮個人情報を含む漏洩が許されない様々なデータが蓄積されている。そのためPalantir Foundryを使用する端末のセキュリティーは厳重に管理する必要がある。
既存のシンクライアントは開発環境に不向き
介護RDPの利用においてはデータ閲覧が中心となるSOMPOグループのエンドユーザーの業務用端末には、既にシンクライアントを全面的に導入していた。一方、介護RDPの開発環境には、既存の業務用端末を適用するのは難しかった。
開発環境にはハイスペックのマシンが必要であるほか、「介護RDPの開発は、外部のパートナー無しには成立しないプロジェクト。外部のパートナーも利用可能で、セキュリティーが担保されていて、利用状況も監視できる開発環境が必要だった」(SOMPOHDデジタル・データ戦略部の岡部勇一課長代理)との事情があったためだ。
そこで選択したのが、マイクロソフトが2021年7月に発表した仮想デスクトップのSaaSであるWindows 365だ。開発者が使用する仮想マシンは、8コアの仮想CPUと32GB(ギガバイト)のメモリーを搭載する。