タイヤ大手の住友ゴム工業が、タイヤや路面の状態を検知するソフトウエア「センシングコア」の開発に注力している(図1)。2022年から実証実験を進めており、すでに複数の自動車メーカーへの導入が決まっているという。同ソフトを活用した事業で、2030年には100億円の営業利益を目指す。
センシングコアは、タイヤの回転信号やエンジンのトルク、回転数といった情報を基に、タイヤの空気圧や荷重、摩耗量、路面のμ(ミュー、摩擦係数)を検知するソフト。例えば、タイヤの空気圧が減ると、直径が小さくなり同じ走行速度での回転数が増えるほか、剛性が低下して共振の周波数が下がる。空気圧の場合、このような原理を利用して検知する。
摩耗や路面のμは、駆動力(制動力)とスリップ率(タイヤの回転速度と車両速度の差を車両速度で除した値)の関係をコンピューター上でプロットし、グラフの傾きから検知するという(図2)。
こうした知見は、住友ゴムが約25年にわたって5000万台以上に提供してきた、空気圧低下の警報装置(Deflation Warning System、DWS)で得たもの。DWSの機能をタイヤの荷重や摩耗量、路面状態の検知にも拡張したのがセンシングコアである。
住友ゴムが想定する、センシングコアの導入による利点はさまざまだ。例えば、タイヤの空気圧や摩耗量が分かれば、パンクの防止やタイヤ点検の省力化などにつながる。タイヤ荷重の把握は、輸送車両での過剰な積載や左右に片寄った積載、横転事故の防止に生かせるという。路面状態が分かれば、滑りやすいことを運転者に通知して注意を促せる。
さらに、タイヤによるセンシングによって、車両に搭載している他のセンサーを補完、代替したり、四輪駆動(4WD)車における駆動トルクを制御したりといった応用も考えられるという。